2017年06月07日

まちづくりレポート みんなで創るマチ 問屋町ー若い店主とオーナーの連携によりさらなるブランド価値向上に挑む岡山市北区問屋町

基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.243]

社会研究部 准主任研究員   塩澤 誠一郎

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1―問屋町というまちの個性

[図表1]問屋町地図 1|中心部から3km、広い道路幅員
問屋町は、今では中国・四国地方を代表するオシャレなまちとして知られている。しかし、もともとは卸売団地として形成された。岡山駅から南西約3kmに位置し、約14.5ヘクタールのエリアは、土地区画整理事業によって概ね100m四方のブロックで構成されている。その道路幅員は、最大で18mと非常に広い。商品の配送に使用するトラックの通行や荷積み荷下ろしに必要な空間を確保するためのものだ。
2|倉庫を改装したテナントビル
店舗が入るビルは、多くが卸売業の倉庫やオフィスとして活用されていたものだ。間口が広く、天井が高い建物が多い。それを改装して複数の店舗が入居する形態としている。2~4階建てが主で、道路に面した各建物の壁面、軒高、スカイラインがほぼそろっており、シンプルな外観と相まって、街並みに統一感を与えている。まっすぐな広い道路に低層の建物が並び、空の広がりがまち全体を開放的な雰囲気にしている。これこそが問屋町というまちの個性であり、最大の魅力である。
問屋町の街並み

2―問屋町ブランドを確立するまで

1|卸売業以外の入居を認める
問屋町は、「協同組合岡山県卸センター」(以下、組合)が用地を取得し、1968年に整備したもので、現在も問屋町の多くの土地・建物を組合の構成メンバーが所有している。1992年の大規模小売店舗立地法改正以降、経営環境が急速に悪化していった。この状況を打開するため、組合は、2000年に定款を変更して卸売業以外の入居を認め、幅広い参入を募り始めた。

2|リノベーション
後に、次々と問屋町でビルのリノベーションを手がけて現在の問屋町を形作っていったのが、明石卓巳さん1である。明石さんは、まちづくりに広告プロモーションの手法を取り入れた。メイン通りにある、明石さんの構想に賛同するオーナーのビルをリノベーションし、岡山県内に本社を持つブランド力の高いテナントを誘致した。それらができると、急速に客足が増え、次第に周囲に店舗が増えていった。

1広告プロモーションの企画・制作を専門とする。株式会社レイデックス代表取締役

3|賃料の低さと路上駐車
店舗が増えたのには別の理由もある。当時の問屋町のテナント賃料は岡山駅周辺の中心部に比べ3~5割低く、新規出店するには優位であった。加えて、従来から路上駐車が規制されていなかったため、店舗側で来客用の駐車場を確保する必要が無かった。来客にとっても、駐車時間を気にすることなく買い物や飲食を楽しむことができる。こうして問屋町はブランドイメージを確立し、高感度な若者を惹きつけるまちになっていった。

3―まちづくりの転機

1|家賃の高騰、駐車マナーの悪化
需要が高まれば当然家賃相場も上がる。2009年頃には、市中心部との家賃差はほとんど無くなっていた。家賃の値上げに耐えられない店舗は撤退し、すぐに別の店舗が入居した。問屋町ブランドとは関係なく出店する店舗も増え始め、ブランド力の低下が懸念されてきた。駐車マナーの問題が顕在化したのもその頃からだ。来街者の増加によって駐車スペースが不足し、マナー違反が増え、歩行者などから警察に苦情が寄せられるようになった。

2|テナント会の発足
そうした状況を改善していくため、ビルオーナーとテナントで連携しようとする動きが組合の方から持ち上がり、2010年9月に58店舗が加盟して「問屋町テナント会」が発足した。以降、駐車マナー対策と活性化に向けて、組合とテナント会が協力した取り組みを積み重ねていった。

3|モノサシ
2013年4月、組合は、設立50周年記念として、問屋町マップと、問屋町のロゴマーク及びコンセプトコピーを制作した。明石さんが手がけたものだ。明石さんは、組合とテナント会が協力していく中で、まちづくりに対する考え方を改めたという。自分自身が前面に出て動いていた頃と異なり、テナント会の若手がまちづくりに対しモチベーションを高めていった。その姿に接し、関係者自身がこのまちにかかわることに喜びを感じることが重要だと気付いた。

明石さんはこうした考えを組合に話す機会を得た上で、組合からの依頼でこれらを制作した。コンセプトコピーは、『みんなで創るマチ』。提案書には次のように説明されている。「私たちが目指す“マチ”は形式的なものだけではなく、そこに関わる人々の喜びがプラスされて初めて成立します。だから、誰にでも分かりやすい日常的な言葉を“問屋町コンセプトコピー”として掲げました」明石さんはこれをいつでも携帯できる「モノサシ」と呼ぶ。「このまちに関わる人を増やして、みんなが喜ぶまちづくりを行う。そのときに必要なのが共通のモノサシ。困ったときはこれで測り直せばいい、行動指針になる」
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社会研究部   准主任研究員

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

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