2017年05月30日

図表でみる中国経済(人口問題編)-「人口ボーナス」から「人口オーナス」へ、バブル崩壊の遠因になる恐れも

三尾 幸吉郎

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1――「富士山型」から「つぼ型」へ変化

現在の中国の人口は約13.83億人(男性は約7.08億人、女性は約6.75億人、2016年)である。前年と比べると約8百万人増えている。中華人民共和国が建国された1949年には約5.42億人だったので約2.5倍になった。1960-61年に大躍進政策の失敗やその後の飢饉で2年連続減少したのを除けば右肩上がりで増加してきた(図表-1)。
(図表-1)中国の人口
しかし、増加率で見ると、建国から改革開放(1978年)までは年率2%で増加したものの、1980年代は年率1.5%、1990年代は同1.0%、2000年代は同0.6%、2011年以降は同0.5%と伸びは鈍化してきた。この背景には1979年に導入された「一人っ子政策」がある。そして、「富士山型」だった人口ピラミッドは「つぼ型」へと変化している(図表-2、3)。
(図表-2)中国の人口ピラミッド(1982年)/(図表-3)中国の人口ピラミッド(2015年)

2――人口問題が経済成長の足かせに

2――人口問題が経済成長の足かせに

1「一人っ子政策」から「二人っ子政策へ」
人口増加率の低下は経済成長にマイナスの影響を与える。人口増加率が低下すれば、一人当たり個人消費が増えない限り、個人消費の伸びも低下するからだ。前述のとおり人口増加率は改革開放直後の1.455%(1981年)から0.586%(2016年)へと低下した。この間の平均寿命は、政治的に安定したことや経済的に豊かになったことなどを背景に67.77歳(1981年)から76.34歳(2015年)へ伸びた。しかし、将来の食糧難に備えて1979年に「一人っ子政策」を導入したことから出生率(年出生人数÷年平均人数)は2.091%(1981年)から1.295%(2016年)へと大きく低下し、人口増加率を低下させることとなった(図表-4)。
(図表-4)中国の出生率・死亡率の推移
その後2013年の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では、「一人っ子政策」の軌道修正を決定、2016年には「二人っ子政策」に移行した。これを受けて出生率は2015年の1.207%から小幅ながらも上昇した。
2「人口ボーナス」から「人口オーナス」へ
また、人口ピラミッドの「富士山型」から「つぼ型」への変化も経済成長にマイナスの影響を与える。「富士山型」の時期には、新たに経済活動に従事する若年層が年々増えるため、所得の伸びも高くなり経済成長を後押しする(人口ボーナス)。しかし、「つぼ型」の人口ピラミッドになると、新たに経済活動に従事する若年層が年々減少するため、経済成長の足かせとなる(人口オーナス)。

経済活動人口の推移を見ると、長らく右肩上がりで増加し、中国経済に「人口ボーナス」をもたらしてきた(図表-5)。しかし、財やサービスの生産をする上で中心的な役割を担う生産年齢人口(15~64歳)は、既に2013年の10億582万人をピークに減少に転じており、2016年には10億260万人とピークから322万人も減少している。そして、十分豊かになる前に高齢化が進む「未富先老」への懸念が高まってきた。そこで、前述の3中全会では「漸進的な定年引き上げ政策を研究・策定する」との方針を示し、「人口オーナス」がもたらす経済への悪影響を少しでも緩和しようと動き出した。
(図表-5)中国の経済活動人口と生産年齢人口(15-64歳)
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三尾 幸吉郎

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