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- 中国経済見通し~景気の好調は今後も続くのか?
2017年05月25日
1.経済成長とインフレ
中国では経済成長率が加速してきた。4月17日に中国国家統計局が公表した17年1-3月期の実質成長率は前年同期比6.9%増と2四半期連続で上昇、3月開催の全国人民代表大会(国会に相当)で決めた成長率目標「6.5%前後」を上回る好スタートとなった(図表-1)。内訳を見ると、第1次産業は前年同期比3.0%増、第2次産業は同6.4%増、第3次産業は同7.7%増だった。第3次産業が引き続き最も高い伸びを示し中国経済を牽引した。また、ここもと足かせとなっていた第2次産業も、16年1-3月期の伸び(同5.9%増)を底に持ち直しつつある。
また、国内総生産(名目)は18兆683億元(日本円に換算すると約298兆円)と、16年1-3月期の16兆1573億元を1兆9110億元上回り、前年同期比11.8%増となった。これは2013年10-12月期の同10.6%増以来となる2桁成長復帰である(図表-2)。鋼材や石炭などの価格上昇で実質的には付加価値が目減りしているとはいえ、2桁成長復帰は景況感を明るくしている。
一方、インフレ面を見ると、消費者物価は落ち着いているものの、工業生産者出荷価格は上昇した(図表-3)。17年1-4月期の消費者物価は前年同期比1.4%上昇と2016年通期の同2.0%上昇を0.6ポイント下回った。天候に恵まれたことで食品が同2.4%下落したことが主因である。また、17年1-4月期の工業生産者出荷価格は前年同期比7.2%上昇と16年10-12月期の同3.3%上昇を大きく上回った。資源高や人民元安といった価格上昇要因もあるが、中国政府が進めた過剰生産能力の削減に伴う供給減と、中国国内のインフラ投資加速に伴う需要増で、需給バランスが改善した面もある。このように供給過剰によるデフレ圧力は薄れてきたものの、鋼材価格は3月中旬をピークに下落に転じており、世界経済や不動産開発の動向次第では再び過剰感が強まる可能性も否定できない。需給バランスの変化には今後も注意が必要である。
また、国内総生産(名目)は18兆683億元(日本円に換算すると約298兆円)と、16年1-3月期の16兆1573億元を1兆9110億元上回り、前年同期比11.8%増となった。これは2013年10-12月期の同10.6%増以来となる2桁成長復帰である(図表-2)。鋼材や石炭などの価格上昇で実質的には付加価値が目減りしているとはいえ、2桁成長復帰は景況感を明るくしている。
一方、インフレ面を見ると、消費者物価は落ち着いているものの、工業生産者出荷価格は上昇した(図表-3)。17年1-4月期の消費者物価は前年同期比1.4%上昇と2016年通期の同2.0%上昇を0.6ポイント下回った。天候に恵まれたことで食品が同2.4%下落したことが主因である。また、17年1-4月期の工業生産者出荷価格は前年同期比7.2%上昇と16年10-12月期の同3.3%上昇を大きく上回った。資源高や人民元安といった価格上昇要因もあるが、中国政府が進めた過剰生産能力の削減に伴う供給減と、中国国内のインフラ投資加速に伴う需要増で、需給バランスが改善した面もある。このように供給過剰によるデフレ圧力は薄れてきたものの、鋼材価格は3月中旬をピークに下落に転じており、世界経済や不動産開発の動向次第では再び過剰感が強まる可能性も否定できない。需給バランスの変化には今後も注意が必要である。
2.需要面の動き
2017年以降の投資は前年並みの伸びを予想している。(1)企業利益の底打ち(図表-10)、(2)「中国製造2025」関連領域に対する中国政府の手厚い政策支援、(3)新型都市化・環境対応に伴う巨大なインフラ需要1があるため、投資は堅調と見ている。但し、(1)住宅規制の強化に伴って住宅着工が減速すると予想されることや、(2)過剰生産能力を抱える製造業を中心に過剰債務のデレバレッジ(債務圧縮)が進むと見込まれることから、投資全体としては前年並みの伸びに留まると見ている。
なお、中国では、大気汚染対策、水質汚染対策、土壌汚染対策、ごみ処理能力増強など環境関連や、中国共産党・政府が2014年3月に発表した「新型都市化計画(2014~2020年)」に伴う交通物流関連の需要が大きいため、成長率目標を下回る恐れが出てきた場合には、長期計画を前倒してインフラ投資を加速させる可能性が高い。
1 新型都市化が生み出す投資需要は巨大で2020年までの累計で42兆元に達すると試算されている(中国財政部)。スケジュールとしては2017年までが試行地域における先行実施期間となり、その成果を踏まえて2018-20年には全国展開される予定。なおこれに関連して、2016年5月11日には投資総額4.7兆元に及ぶ交通インフラ整備3ヵ年計画(2016-18年)が発表された。
1 新型都市化が生み出す投資需要は巨大で2020年までの累計で42兆元に達すると試算されている(中国財政部)。スケジュールとしては2017年までが試行地域における先行実施期間となり、その成果を踏まえて2018-20年には全国展開される予定。なおこれに関連して、2016年5月11日には投資総額4.7兆元に及ぶ交通インフラ整備3ヵ年計画(2016-18年)が発表された。
3|輸出
輸出は底打ちしてきた。2017年1-4月期の輸出額(ドルベース)は前年比8.1%増と、2016年の同7.7%減からプラスに転じた(図表-11)。相手先別に見ると、米国向けが前年比11.0%増、EU向けが同7.1%増、日本向けが同6.9%増、ASEAN向けが同11.6%増と軒並み増加に転じている。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注(中国国家統計局)や貿易輸出先行指数(中国税関総署)が好調なことから、当面は高い伸びを維持すると見られる(図表-12)。
2017年以降の輸出は1桁台前半の伸びに留まると予想している。引き続き、(1)世界経済の持続的回復や、(2)「一帯一路」の沿線地域への影響力拡大がプラス要因となるものの、国内生産の製造コストが上昇した中で、製造拠点を後発新興国へ移転する動きが外資系企業ばかりか国内企業にも及んできているため、輸出を抑制するマイナス要因として働くからである。
輸出は底打ちしてきた。2017年1-4月期の輸出額(ドルベース)は前年比8.1%増と、2016年の同7.7%減からプラスに転じた(図表-11)。相手先別に見ると、米国向けが前年比11.0%増、EU向けが同7.1%増、日本向けが同6.9%増、ASEAN向けが同11.6%増と軒並み増加に転じている。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注(中国国家統計局)や貿易輸出先行指数(中国税関総署)が好調なことから、当面は高い伸びを維持すると見られる(図表-12)。
2017年以降の輸出は1桁台前半の伸びに留まると予想している。引き続き、(1)世界経済の持続的回復や、(2)「一帯一路」の沿線地域への影響力拡大がプラス要因となるものの、国内生産の製造コストが上昇した中で、製造拠点を後発新興国へ移転する動きが外資系企業ばかりか国内企業にも及んできているため、輸出を抑制するマイナス要因として働くからである。
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