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- 証拠に基づく政策立案~統計改革推進会議の最終取りまとめ~
1――証拠に基づく政策立案
インターネットが登場して以降、情報を調べることは昔に比べてはるかに容易になったが、そもそも正確な情報が世の中になければ、いくら検索技術が発達してもどうしようもない。第二次世界大戦直後にGHQのマッカーサー元帥が日本の統計が杜撰なのに激怒した折に、当時の吉田茂首相が日本の統計がしっかりしてればあんな無謀な戦争をしたりはしなかったと切り返したというのは有名な逸話だ。証拠に基づいた政策決定をするには、証拠となる各種統計がしっかりしたものでなくてはならない。迂遠なようだが高層建築物を作るには、まず土台となる基礎をしっかり作らなければならないのと同じ理屈である。
2――証明できないという落とし穴
企業経営でも、短期的な利益は見えやすく、長期的な利益は見えにくくて証明することも難しい。どうしても短期的な利益を追い求めることになりがちで、そのために、より大きな長期的な利益を失ってしまう危険性が大きいことは常に念頭に置いておかなくてはならないだろう。
3――全くの不確実性
起業家が周囲があきれるほど無謀に見える事業に取り組んで大成功を収めることがあるのは、普通の人達には想像もできないような可能性があることを見抜いて決断するからだろう。アップル社の共同設立者の故スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを構想した時には、この事業がどれほどの規模の成功をもたらすのか、成功の可能性がどの程度あるのか、といった問題を判断する「証拠」はほとんど何もなかったはずだ。そもそもその時点ではiPhoneはまだ影も形もなく、当のジョブズ氏にもどのようなものができあがるのかは分かっていなかっただろう。
不確実性は、悪い方に行けば危険性だが、良い方向に行けば可能性のことだ。リーダーの役割は、証拠に基づく意思決定の上に、不確実性にどう対処するかを決断するところにあるのではないだろうか。
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
研究・専門分野
(2017年05月24日「エコノミストの眼」)
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