2014年4月の消費増税以降、個人消費は低迷が続く。大きな要因の一つには、賃金の上昇を上回って物価が上昇しているため、実質所得が増えていないことがある。一方で経済財政諮問会議での指摘のように、20~40代の消費性向が他年代と比べて低い状況もある。この背景には、年齢が若いほど賃金水準の低い非正規雇用者が多く、正規雇用者でもかつてほど収入が伸びないため、消費抑制意識が強いことがある。また、若年層の消費実態で述べたように
3、現代の成熟した消費社会では、昔ほどお金を出さなくても質の高い消費生活を送ることができ、物質的欲求が低下している影響もある。
とはいえ、20~40代の家族形成期は消費が立ち上がり活性化する時期だ。この時期に消費が立ち上がらなければ日本の消費市場は膨らみにくい。消費社会の成熟化による影響はありながらも、希望する結婚や子育ての実現が進めば、自然に発生し持続的に拡大する消費もあるだろう。
また、共働き夫婦の増加により、個人の収入は上の世代より少なくても、世帯収入では比較的多い家庭もある。夫婦ともにフルタイムで働く「パワーカップル」は2016年に424万世帯で増加傾向にある
4。消費拡大に向けては育児と仕事の両立支援を進め、パワーカップルを増やすという方向もある。ただし、子育て世帯では将来の経済不安から、とにかく手元にお金を置きたいという意識が強く、世帯収入が減る中で貯蓄を増やしている状況もある
5。よって、増えた収入を有意義な消費に向かわせるためには、社会保障制度の持続性確保など将来不安の解消もあわせて進める必要がある。
中核世代の経済基盤の安定化は日本の将来を考える上で急務だ。現在、政策も大きく動いており、今後は一定の改善が望めるだろう。一億総活躍プランで示された10年間の工程表を確実に達成するとともに、過渡期では生活者の状況を適切に把握し、臨機応変に計画を修正できるような体制も必要だ。
3 久我尚子「若年層の消費実態(1)~」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2016/6~)
4 総務省「労働力調査」にて、夫婦ともに週35時間以上就業の世帯数。
5 久我尚子「共働き世帯の消費実態(1)」」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2017/3/15)