- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 子ども・子育て支援 >
- 少子化対策に欠ける視点-“チルドレン・ファースト”の「子ども政策」を!
2017年の子どもの割合は12.4%と1975年から43年連続の低下だ。1997年に子どもの割合が65歳以上の老年人口割合を初めて下回り、現在の子どもの数は高齢者の数の半分を大きく割り込んでいる。都道府県別の子どもの割合は、沖縄県が17.2%と最も高く、秋田県が10.3%と最も低い。東京都は11.3%で全国平均を下回る。各国別の子どもの割合をみると、日本は最も低い水準にあり、世界一の高齢化国であると同時に、世界一の少子化国でもあるのだ。
このような状況を踏まえると、日本の少子化対策が急務であることは明白だ。主要な少子化要因は婚姻率の低下や夫婦一組あたりの出生数の減少と考えられ、出生数の回復に向けたさまざまな対策が取られてきた。しかし、これまでの少子化対策は、子どもの数を増やす施策に重点が置かれ、子どもの「生活の質」の向上という“チルドレン・ファースト”の視点が希薄だったのではないか。本来の少子化対策とは、子どもを政策対象の中心に据えた子どもにとって良好な生育環境をつくることだろう。
少子化が進むことで、子どもは学校などで集団行動を学ぶ機会が少なくなった。一人っ子が増え、家庭における小さな異年齢社会の経験も乏しい。親の過剰な関与や過保護が子どもの自立を阻害し、親の期待に重圧を感じる子どももいるだろう。また、経済的に不安定な非正規雇用の若年層が増加し、子どものいる世帯の「相対的貧困率」が高まっている。児童虐待も広がりを見せるなど、日本の子どもたちを取り巻く環境は決して恵まれた状況にあるとは言えない。
高齢化対策は高齢者の「生活の質」の向上のために社会保障制度等の充実を図るもので、その制度を破綻させないために高齢者の数を云々ということはない。経済成長や社会保障制度を維持するために子どもの数を増やすことに偏重した施策は、政策の優先順位の主客転倒だ。“チルドレン・ファースト”の「子ども政策」の推進が、子どもを産むことを希望する人や、子育ての喜びを享受する人を増やし、多くの子どもであふれる活力ある社会を実現することにつながるのではないだろうか。
(参考)研究員の眼『少子化政策めぐる議論への疑問~“待機児童ゼロ”の「子育て」・「子育ち」支援』(2013年5月27日)
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2017年05月16日「研究員の眼」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月19日
しぶといドル高圧力、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ5月号 -
2024年04月19日
年金将来見通しの経済前提は、内閣府3シナリオにゼロ成長を追加-2024年夏に公表される将来見通しへの影響 -
2024年04月19日
パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割 -
2024年04月19日
消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し -
2024年04月19日
ふるさと納税のデフォルト使途-ふるさと納税の使途は誰が選択しているのか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【少子化対策に欠ける視点-“チルドレン・ファースト”の「子ども政策」を!】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
少子化対策に欠ける視点-“チルドレン・ファースト”の「子ども政策」を!のレポート Topへ