2017年05月08日

オフィス・ホテル・物流市場では供給消化が好調維持の鍵-不動産クォータリー・レビュー2017年第1四半期

加藤 えり子

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3.不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
オフィス市場では、東京都心部のAクラスオフィスの供給状況が賃料に影響を与えている。三幸エステートとニッセイ基礎研究所が共同で開発した成約賃料データに基づくオフィスレント・インデックス2によると、2017年第1四半期の東京都心部オフィス賃料は、Aクラスビルで33,398円/坪、前期比-1.1%、前年同期比-1.8%となった(図表-9)。東京Aクラスビル成約賃料は、2015年第3四半期をピークに緩やかな低下傾向が続いている。景況や企業業績は良好であるが、2018年に約140万㎡の新規供給が見込まれることから、テナント優位の状況が作り出されている。今後も賃料水準を維持するには、新規供給された貸床に見合った需要を喚起できるかが鍵となる。一方、Bクラスビル3の成約賃料インデックスは前期比+7.4%・前年同月比-1.1%、Cクラスは前期比+2.8%・前年同月比+2.0%となった(図表-9)。特にCクラスビルについては、Aクラスビルの供給増による影響が少なく、賃料回復に底堅さが見られる。しかしながら全クラスとも前回ピーク時の賃料水準にまでは到達していない。空室率については、Aクラスの反転上昇が顕著で、2016年第2四半期の2.63%を底に3四半期連続で上昇し、2017年第1四半期は3.9%となった。B・Cクラスは、低下が継続し賃料上昇を促した(図表-10)。

また、東京以外の主要都市では新規供給が抑制され、概して空室率の低下傾向が継続している(図表-11)。ただし横浜については自社ビルへの移転にともない、名古屋ではJR名古屋駅周辺での大規模オフィスビルの竣工などの影響で、空室率の上昇が見られた。
図表-9 東京都心A-Cクラスビルの成約賃料インデックスの推移/図表-10 東京都心A-Cクラスビルの空室率の推移
図表-11 主要都市のオフィスビル空室率
 
2 三幸エステート株式会社『オフィスレント・インデックス』 http://www.sanko-e.co.jp/data/rent-index/publish-2017
3 基準階面積200坪以上でAクラスに含まれないビル(築年数経過でAクラスの対象外となったビルを含む)。
(2) 賃貸マンション
主要都市の賃貸マンションの賃料は、概ね上昇基調を維持している。東京23区のマンション賃料インデックスは、2016年第3四半期に一旦下落したものの、第4四半期は再び上昇に転じた(図表-12)。また、東京都心部の高級賃貸マンションは、空室率の低下傾向が続いていたが、2016年に入ってからはほぼ横ばいとなっている。賃料については変動しながらも上昇基調を辿ってきているが、2017年第1四半期は前期比-3.0%の15,853円/坪となった(図表-13)。前回ピーク時の17,000円台には到達しておらず、入居者層の賃料負担力が当時より低下していることがうかがえる。
図表-12 主要都市のマンション賃料/図表-13 高級賃貸マンションの賃料と空室率
(3) 商業施設
業態別の商業販売額は、百貨店で前年同月比マイナスが13ヶ月続いているが、2017年1-3月はマイナス幅の縮小が見られた。スーパーも前年同月比マイナスの月が散見されるが、下落幅は百貨店ほどではなく、相対的に安定した水準を維持している。業態の中ではコンビニエンスストアは堅調な推移となっている(図表-14)。図表-15に、東京および地方主要都市のプライム商業エリアの路面店舗賃料の推移を示した。銀座は2015年に高額な契約が平均賃料水準を押し上げたが、その後は前回ピークの2008年の水準までは届かずに上昇は一服した。2016年以降は、各都市の路面店舗賃料はほぼ横ばいで推移している。
図表-14 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの販売額(既存店、前年比)/図表-15 主要都市のプライム商業エリア路面店舗賃料
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加藤 えり子

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