2017年05月08日

オフィス・ホテル・物流市場では供給消化が好調維持の鍵-不動産クォータリー・レビュー2017年第1四半期

加藤 えり子

文字サイズ

1.経済動向と住宅市場

2016年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、設備投資の上方修正などから前期比0.2%から0.3%へ修正された。これを受けて2016年度の実質GDP成長率の当社予測は1.2%から1.3%となった。2017年1-3月期の実質GDPは前期比0.4%と5四半期連続のプラス成長になったと推計され、景気の先行きは企業収益の改善に伴う設備投資の持ち直しなどから堅調な推移が続くことが予想される(図表-1)。

2017年3月の日銀短観では、業況判断指数(DI)が大企業製造業・非製造業ともに上昇した。大企業不動産業は、2015年に入って以降30を上まわる高い水準にあるが、3ヵ月後の見通しは28で、大企業非製造業平均に比べ高水準ながらも先行きは好調維持を不安視する傾向が見られる(図表-2)。
図表-1 実質GDP成長率の動きと予測/図表-2 日銀短観(3月調査)
住宅市場では、全国の新設住宅着工戸数が前年同月比でややプラスの堅調な推移となっている(図表-3)。その牽引役は貸家であり、個人がアパートローンを借入れての貸家着工については警鐘を鳴らす報道も散見され、金融庁および日銀が金融機関の採算性に対する審査体制等を強化する方向にある。分譲マンションについては、首都圏の新規発売戸数の1-3月合計は7,102戸と前年を106%上回ったものの、各月とも契約率が70%を割り込み、販売在庫数が増加傾向にある(図表-4)。1-3月の中古マンション成約件数は昨年とほぼ同水準であったが、価格は踊り場にある(図表-5)。分譲マンションについては、販売単価の上昇には歯止めがかかった模様であり、在庫消化のために家具付販売なども行われ今後は価格が下がる可能性がある。中古市場でも新築物件の値下がり期待や流通量の増加から価格上昇は抑制されている。分譲、中古ともにこれまでの価格上昇で実需層には割高になっており、その影響で賃貸に留まる層があると思われることから、今後の価格動向が賃貸市場にも影響しよう。
図表-3 新設住宅着工戸数(全国)/図表-4 首都圏 分譲マンション新規発売戸数(前年同月比)と販売在庫数
図表-5 首都圏中古マンション成約件数と㎡単価の推移

2.地価動向

2.地価動向

3月に公表された2017年1月公示地価は、全国全用途で+0.4%となり、8年ぶりにプラスに転じた昨年に続き上昇した。商業地、住宅地の双方で上昇地点割合は増加し、下落地点割合が減少した(図表-6)。三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)と地方四都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で平均変動率がプラスとなったが、地方圏平均では改善はみられたものの全ての用途で昨年同様マイナスとなった。個別地点では、商業地の変動率上位1位から5位を大阪府の地点が占め、6位も京都府と関西での地価上昇が力強かった(図表-7)。訪日客による高額商品消費が影を潜め一人当たり消費額は減少したものの、入込客数の増加傾向は続いており、それに期待したホテルおよび店舗用途の高額取引が地価上昇に寄与している。一方、住宅地では上昇率上位10地点のうち7地点を宮城県が占め、被災地での住宅需要が以前高いことが示された。

国土交通省の地価LOOKレポート(主要都市の高度利用地地価動向報告)によれば、第3四半期から横ばい地点が増加した。第4四半期は上昇数は1地点増加したものの、前期まであった6%以上の上昇地点が無くなり、地価上昇に前年ほどの勢いは見られない(図表-8)。
図表-6 公示地価上昇地点割合の推移
図表-7 商業地 公示地価上昇率上位(全国)/図表-8 全国主要都市の高度利用地の地価上昇・下落地区の推移
Xでシェアする Facebookでシェアする

加藤 えり子

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【オフィス・ホテル・物流市場では供給消化が好調維持の鍵-不動産クォータリー・レビュー2017年第1四半期】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

オフィス・ホテル・物流市場では供給消化が好調維持の鍵-不動産クォータリー・レビュー2017年第1四半期のレポート Topへ