2017年04月28日

インドネシアの生命保険市場-期待の生保新興市場インドネシアの状況-

松岡 博司

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4――市場参入の状況 会社数の推移

1|生命保険会社
2015年末現在、インドネシアには55の登録生命保険会社がある。内訳は、内国民間会社が33社、外資との合弁会社が22社である(次の表2を参照)。
表2 インドネシアの生命保険会社数の推移
収入保険料で計算した2015年のシェアで見ると、内国民間生保会社のシェアが32.7%、外資との合弁生保会社のシェアが67.3%となっており、市場の3分の2を外資合弁会社が押さえているという構造になっている。

さらに収入保険料上位10社を見ると、上位に外資系生保会社が数多くランクインしていることがわかる。
表3 収入保険料上位10社(2015年末)
2|イスラム保険(シャリア生命保険またはタカフル生命保険)の状況 
インドネシアは人口の約9割がイスラム教徒という宗教的な側面を持つ国である。そしてイスラム教徒の世界には、一般的な生保事業とは別途のイスラムの教義に即したイスラム生命保険であるシャリア生命保険(世界的にはタカフル生命保険と呼ばれることが多い)がある。

インドネシアにおいてもシャリア生命保険の提供がなされている。

下の表4はインドネシアにおいてシャリア生命保険事業を営む会社数の推移をまとめている。2015年末現在、シャリア生命保険専業会社が5社、シャリア生命保険を提供する部門を持つ生保会社が19社存在する。
表4 シャリア生命保険を提供する会社数の推移
また次の表5はシャリア生命保険事業の業績数値と一般の生命保険事業の業績数値を対比したものである。シャリア生命保険事業の規模は2015年、被保険者数で一般生命保険事業の8.3%、保険料で6.1%、総資産で5.7%の大きさとなっている。
表5 シャリア生保事業と一般の生保事業の規模比較
今後、インドネシア経済の発展とともに国民の間に生命保険へのニーズが高まることが予想されるが、その際には、イスラム教徒の何割かはイスラムの教義に則ったシャリア生命保険を選択することが考えられる。そのためシャリア生命保険事業の将来性は明るいと考えられており、これが全体としてのインドネシア生命保険事業の魅力を高めることともなっている。シャリア生命保険事業の発展を見越して多くの生命保険会社が取組を開始した。

OJKはシャリア生命保険事業をビジネスユニットの一つとして行っている生命保険会社に対し、シャリア生命保険部門を分社化することを求めている。これに応じ2015年には2つのシャリア生命保険専業会社が発足した。これから同様の動きが広がると考えられる。
 

5――さいごに

5――さいごに

以上、インドネシアの生命保険市場の状況をざっと見てきた。

インドネシアの生命保険事業に明るい未来を見出す人の多くは、インドネシアには2.55億人もの人口があり、その中で中間層が育ってきていることをあげることが多い。

ただしインドネシアの生命保険市場を高成長が約束された地と安直に考えることは危険であろう。近年のインドネシア経済は主要な資金源である資源価格の低迷に苦しんでいる。インドネシア生命保険市場における生命保険料や総資産の増加率も、規模が大きくなるにしたがって鈍ってきた。

そしてインドネシア生命保険市場における競合は厳しいものになっている。市場が順調に拡大している限りは参加者全てに恩恵が与えられるはずと考えられそうだが、現実には、現在、近代的な生保市場における競争に乗り遅れたかつてのインドネシア第2位生保会社が経営危機に瀕している。

今回はインドネシア生保市場の概要をなぞっただけであるが、また改めて、インドネシアの生保市場についての調査と考察を行うこととしたい。
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松岡 博司

研究・専門分野

(2017年04月28日「保険・年金フォーカス」)

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