2017年04月17日

欧州大手保険グループの2016年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-

中村 亮一

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1―はじめに

欧州大手保険グループの2016年決算の発表が2月から3月にかけて行われており、それに伴い、ソルベンシーII制度に基づく各種数値等も開示されている。今回は、各社の2016年末のSCR比率の状況等について、SCR比率の水準やその感応度及び2014年末から2016年末にかけての推移等を2回のレポートに分けて報告する。

今回のレポートでは、欧州大手保険グループのSCR比率の水準等について、全体的な状況を報告する。
 

2―欧州大手保険グループのSCR比率の推移

2―欧州大手保険グループのSCR比率の推移

欧州大手保険グループのSCR比率(=自己資本/SCR(Solvency Capital Requirement:ソルベンシー資本要件))の2014年末から2016年末の推移については、下記の表の通りとなっている。なお、ZurichはソルベンシーIIの対象ではないが、参考のためスイスの制度に基づく数値等を掲載している。
欧州大手保険グループのSCR比率等の推移
この表によれば、例えば、2014年末から2015年末にかけては、AXA、Allianz、Generali(会社)の比率が上昇したのに対して、Prudential の比率は大きく低下した。一方で、2015年末から2016年末にかけては、AXAの比率が低下したのに対して、AllianzやPrudentialの比率は上昇した。Aviva(会社)の比率は2014年末から2015年末にかけて若干上昇し、2016年末も上昇した。Aegonの比率は2015年末から2016年末にかけて若干低下した。

このように、SCR比率の推移は、各社の資本充実やリスクテイクへの方針の差異等を反映して、一律ではなく、必ずしも市場環境に応じて同一のトレンドを示しているわけではない。

さらには、(1)各社の生保と損保等の事業や地域別の構成比率の差異等から、目標とするSCR比率等が異なっている、(2)事業の地域構成の差異からくる為替等の影響の程度が異なっている、(3)規制当局との交渉等を踏まえた内部モデルの変更を実施している会社もある、等の理由から、単純な各社間の絶対水準や年度間の推移の比較ができない、ことには注意が必要になる。
(参考)欧州大手保険グループの事業別内訳(2016年)

3―各社のSCR比率、内部モデルの適用状況、自己資本、SCRの内訳等(全体像)

3―各社のSCR比率、内部モデルの適用状況、自己資本、SCRの内訳等(全体像)

まずは、各社のSCR比率や内部モデルの適用状況等の概要や自己資本やSCRの内訳を、次ページ以下の図表の通りにまとめている。

大手保険グループについては、内部モデルを使用することにより、グループ全体でのSCRを有意なレベルで軽減することができることから、各社とも内部モデルを使用している。

この図表から見てとれるように、欧州の大手保険グループの間でも、SCRの算出方法等が統一されているわけではない。そのため、表面上のSCR比率の水準だけを比較することは必ずしも適切とはいえないが、各社のSCR比率の算出方法等の考え方を比較してみることは、一定意義があるものと考えられる。
欧州大手保険グループのソルベンシーIIによる自己資本及びSCRの内訳(2 0 1 6年末)-その1-
欧州大手保険グループのソルベンシーIIによる自己資本及びSCRの内訳(2 0 1 6年末)-その2-
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中村 亮一

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【欧州大手保険グループの2016年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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