2017年04月14日

貸出・マネタリー統計(17年3月)~銀行貸出では薄利多売化が進行

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.マネーストック: 普通預金の伸びが鈍化、投信は低迷続く

日銀が4月13日に発表した3月のマネーストック統計によると、市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比4.3%(前月は4.2%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同3.6%(前月も同じ)となった(図表9)。やや長めの期間で見ると、伸び率は拡大基調にある。貸出の増勢が強まっていることなどが寄与していると考えられる。
(図表9) M2、M3、広義流動性の伸び率/(図表10) 現金・預金の伸び率
(図表11)投資信託・金銭の信託・準通貨の伸び率 M3の内訳では、普通預金など預金通貨の伸び率が前年比9.5%(前月は10.4%)となり、今年年初をピークに伸びがやや鈍化。一方、準通貨(定期預金など)の伸び率が▲1.7%(前月改定値は▲1.9%)、CD(譲渡性預金)の伸び率が▲5.6%(前月改定値は▲14.7%)とそれぞれマイナス幅を縮小している。 

昨年年初から長らく続いてきた定期預金・CDから普通預金へのシフトは一服しつつある(図表10・11)。
M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比2.6%(前月改定値も同じ)と前月から横ばいになったが、昨年9月(1.5%)をボトムとして伸びが回復してきている。

内訳としては、既述のとおりM3の伸びが拡大基調にあることが大きく寄与している。一方、投資信託(元本ベース)の伸び率は3月時点で前年比2.3%と低下基調が続いているほか、金銭の信託の伸びもマイナス圏での推移が続いている。家計等がリスク性資産への投資を積極化した形跡はまだうかがわれない。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2017年04月14日「経済・金融フラッシュ」)

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