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EUソルベンシーIIの動向-EIOPAがUFR(終局フォワードレート)算出のための新たな方法論を公表(2)-
中村 亮一
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なお、今回の方法論によるUFRの水準については、ユーロの3.65%は高すぎる、との意見もあるが、そうした意見を踏まえて、今回の方法論によるUFR水準を引き下げる方向に見直されていく可能性は低いものと思われる。
EIOPAは完全にボールを投げた形になっている。EIOPAは欧州委員会等の要請にも関わらず、今回の理事会では全会一致で今回の新たな方法論を決定しているとのことである。このことは、前回の提案には反対していたドイツの規制当局であるBaFinも今回の方法論を承認したことを意味している。これは、前回のレポートで説明したように、2016年4月の提案とは異なり、今回の方法論ではいくつかの点で修正が行われ、BaFinも妥協できるとの判断を下したことによるものと推測される。
一方で、ドイツの保険業界や政治家は引き続き反対するスタンスを示しているようである。
EIOPAは、今回欧州委員会が要求していた影響評価を提出している。その内容が十分ではないとの批判もありうる。
欧州委員会は今回のEIOPAの決定に反対する権利がある。ただし、それを正当化するためには、今回の決定が既存の法的テキストに違反していることを示さなければならない。
今回のUFRの見直しに反対する意見は、「移行措置がソルベンシーIIの法的テキストの一部であり、これらがUFRの引き下げの影響を受けることから、UFRの見直しはあくまでも2021年の長期保証措置のレビューと一緒に行われるべきである。」と主張している。
これらの意見等も踏まえて、判断がなされていくことになる。今後欧州委員会からEIOPAに対して各種の照会等も行われていくことも考えられる。最終的に欧州委員会が問題等を指摘できなければ、今回のEIOPAが公表した方法論に基づいて、2018年以降、UFR水準の見直しが実行されていくことになる。
4―まとめ
そもそも、今回の新しいUFR水準設定の方法論については、日本の数字を含めて、その水準の根拠については、各国の中央銀行の2%等のインフレ目標がその前提になっている。以前のレポートでも述べたが、こうして設定されるUFR水準に基づく責任準備金評価を、今後その性格付けを踏まえて、どのような意味合いを有するものとして位置付けていくのかについては、大変興味深いものがある。
もちろん、ソルベンシー評価のための責任準備金評価については、基本的には、監督当局が適正あるいは適当と思われる方式に設定していくものである。重要なことは、保険会社の健全性の確保を通じた契約者保護を確実なものとしていくために、本来的にどのような考え方に基づいて水準設定がなされていくのが望ましいのかを検討して、あるべき姿を設定し、そうして決定される方式や考え方の妥当性・合理性等の説明責任をしっかり果たしていくことにあると思われる。
UFRを巡る議論は極めて注目されているものである。今回のEIOPAの決定に対する欧州委員会等の反応については、引き続き注視し、議論の行方や決着の状況をフォローしていくこととしたい。
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中村 亮一
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(2017年04月12日「保険・年金フォーカス」)
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