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EUソルベンシーIIの動向-EIOPAがUFR(終局フォワードレート)算出のための新たな方法論を公表(2)-
中村 亮一
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1―はじめに
1 EIOPAのプレス・リリース資料は、以下の通り
https://eiopa.europa.eu/Publications/Press%20Releases/2017-04-05%20UFR%20Press%20Release.pdf
2―今回の新たなUFR算出のための方法論公表と同時に示された影響分析
UFR方法論に関する公開協議の内容による影響分析を補完するために、EIOPAは、UFR変更の影響に関する保険および再保険事業への情報要求を実施している。情報要求は2016年末に行われた。336の保険および再保険会社は、プルーデンス・バランスシートとソルベンシー・ポジションについて、UFRを20 bps及び50 bps変更した場合の影響を評価した。
情報要求は、これらの変更の影響が非常に小さいことを示した。UFRが20 bps変更された場合、平均でSCR比率は203%から201%に減少し、UFRが50 bps変更された場合は198%に減少する、となっている。
今回の影響分析で使用された具体的な2つのシナリオは、以下の通りである。
シナリオ1
・以下の通貨以外のUFRを20bps引き下げ
・ハンガリー・フォリント、チリ・ペソ、中国元、コロンビア・ペソ、日本円、ロシア・ルーブルのUFRは20bps引き上げ
シナリオ2
・以下の通貨以外のUFRを50bps引き下げ
・ハンガリー・フォリント、チリ・ペソ、中国元、コロンビア・ペソ、日本円、ロシア・ルーブルのUFRは50bps引き上げ
EIOPAの報告書は、これらのシナリオに基づいた場合の、(1)技術的準備金への影響、(2)移行措置の再計算の軽減効果、(3)繰延税金への影響、(4)自己資金への影響、(5)SCRへの影響、(6)SCR比率への影響、(7)SCR比率の推移分析、を行っている。
UFRの変更は、満期がより長い債務の技術的準備金の計算に使用されるリスクフリー金利の期間構造を変更する。その結果、UFRの変更がこれらの技術的準備金の額に直接的な影響を及ぼす。技術的準備金の額の変更は、ソルベンシーIIのプルーデンス・バランスシートのその他の要素にも影響を及ぼす。
典型的な間接的影響は次の通りとなる。
(1) 技術的準備金の変更により、繰延税金が変更される。その場合、技術的準備金の増加は、繰延税金資産の増加または繰延税金負債の減少をもたらす。
(2) 技術的準備金の変更により、適格自己資本が変更される。技術的準備金の増加は通常、適格自己資本の減少をもたらす。繰延税金の変更によってその増加は緩和される。
(3) 技術的準備金の変更により、SCRとMCRが変更される。技術的準備金の増加は、通常、SCRとMCRの増加につながる。
国別にSCR比率への影響をまとめたものが、次の表である。
これによれば、シナリオ2のUFRの50bpsの引き下げに対して、EEA(European Economic Area:欧州経済領域)全体の平均である2.5%を超える影響を受ける国々は、オランダ、ドイツ、オーストリア、ノルウェー、ベルギーとなる。
特に、オランダは、他の主要国で認められている移行措置が認められていないこともあり、161%から146%に、割合で9.3%低下し、最も大きな影響を受けている。ドイツが5.6%でこれに続き、オーストリアが4.3%、ノルウェーが3.8%、ベルギーが2.9%となっている。
主要国では、英国は、UFRが50bps引き下がってもSCR比率には変化が無い、との結果となっている。
ただし、各種の移行措置等の適用状況が影響度の大きさに関係してくるので、各国間のUFR変更による影響度を比較する際には注意を要するものと思われる。
この結果を受けて、EIOPAのGabriel Bernardino会長は、「保険及び再保険事業に対するUFRの想定された変更による影響は、非常に小さく、管理可能である。」と主張した。
ただし、この分析に対しては、(1)この分析結果は、1時点でのデータに基づいており、ボラティリティは示されていない、(2)金利が今後も現在の水準にとどまると仮定すると、UFRはさらに低下していくことが考慮されていない、との批判もある。
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