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- 株式市場の展望-米政策期待の剥落で、伸び悩む日本の企業業績と株価
2017年04月11日
1――はじめに
日経平均株価は3月下旬に2万円回復を伺う場面もあったものの、市場の期待と裏腹に下げに転じた。米政治への懸念や地政学リスクが意識される中、2万円回復はいつか。2017年度の株式市場を展望する。
2――遠のいた2万円
こうした中、図1のとおり3月中旬まで日経平均は徐々に下値を切り上げ、市場は先行きに強気な様子がうかがえた。幸い、オランダ下院選挙では極右派政党の議席数の伸びが限定的となったことで、ポピュリズム・反グローバル化の流れがフランス大統領選に波及する政治リスクへの懸念はひとまず後退し、「3月中の2万円回復」も意識させられた。
しかし、その期待はあっさりと裏切られ、株価は下落基調にある。背景は、まずトランプ政権の政策実行力に懐疑的な見方が広がったことに加えて、米景気に対する強気な見通しが後退したことだ。医療保険制度改革(オバマケア)代替法案は可決の見込みが立たず取り下げられた。さらに、10年で5兆ドル(約550兆円)を掲げる大型減税も一向に前進せず、市場としては実施時期の後ズレや減税規模の縮小を意識せざるを得なくなった。
また、米FRB(連邦準備制度理事会)が3月に開いたFOMC(公開市場委員会)で、複数のメンバーが「米国株は高すぎる」という認識を示したことが明らかになった。これらの結果、米国株が売られる一方で米国債が買われて米金利が低下、為替市場では円高が進み、日本株も軟調となった。さらには、北朝鮮情勢を巡る緊迫感の高まりや、米中首脳会談が行われている最中に米国がシリアをミサイル攻撃したと報じられ、地政学リスクへの警戒感も高まった。
今後についても決して楽観できず、日経平均2万円への道のりは遠のいたとみるべきだろう。筆者が考えるメインシナリオでは(図2)、5月~6月に1万8,000円前後まで下落した後、徐々に上昇するが17年末は1万9,500円、2万円回復は18年3月頃まで“おあずけ”とみている。
無論、マーケットは勢いで動くこともあるので、何らかの拍子で年内に2万円に達する可能性を完全には否定しない。だが、仮に2万円に届いても一時的に過ぎず、再び2万円割れとなろう。少なくとも2万円を大きく超えて上昇することは考えにくい。最大の理由は、後述するとおり日本企業の業績改善は限定的とみられること、そして米トランプ政策に対する期待がもう一段、剥落することだ。
しかし、その期待はあっさりと裏切られ、株価は下落基調にある。背景は、まずトランプ政権の政策実行力に懐疑的な見方が広がったことに加えて、米景気に対する強気な見通しが後退したことだ。医療保険制度改革(オバマケア)代替法案は可決の見込みが立たず取り下げられた。さらに、10年で5兆ドル(約550兆円)を掲げる大型減税も一向に前進せず、市場としては実施時期の後ズレや減税規模の縮小を意識せざるを得なくなった。
また、米FRB(連邦準備制度理事会)が3月に開いたFOMC(公開市場委員会)で、複数のメンバーが「米国株は高すぎる」という認識を示したことが明らかになった。これらの結果、米国株が売られる一方で米国債が買われて米金利が低下、為替市場では円高が進み、日本株も軟調となった。さらには、北朝鮮情勢を巡る緊迫感の高まりや、米中首脳会談が行われている最中に米国がシリアをミサイル攻撃したと報じられ、地政学リスクへの警戒感も高まった。
今後についても決して楽観できず、日経平均2万円への道のりは遠のいたとみるべきだろう。筆者が考えるメインシナリオでは(図2)、5月~6月に1万8,000円前後まで下落した後、徐々に上昇するが17年末は1万9,500円、2万円回復は18年3月頃まで“おあずけ”とみている。
無論、マーケットは勢いで動くこともあるので、何らかの拍子で年内に2万円に達する可能性を完全には否定しない。だが、仮に2万円に届いても一時的に過ぎず、再び2万円割れとなろう。少なくとも2万円を大きく超えて上昇することは考えにくい。最大の理由は、後述するとおり日本企業の業績改善は限定的とみられること、そして米トランプ政策に対する期待がもう一段、剥落することだ。
3――日本企業のROEと株価
1|日本企業のROEは2年ぶりに改善
今後の株式市場を展望するにあたって、日本企業の“稼ぐチカラ”を点検しよう。いうまでもなく、株価の根幹は企業業績だからだ。まず2016年度のROE(自己資本利益率、東証1部上場企業)は、目安とされる8%を回復する見込みだ(図3)。アベノミクス1年目に当たる13年度の9.3%をピークに2年続けて低下したが、3年ぶりの上昇となる。
ただし、これは3月期決算企業が第3四半期(2016年4~12月)決算を発表した時点の企業自身の見通しである。日本企業は業績見通しを保守的に出す傾向があることを考慮すれば、17年3月期の実績利益はもう一段の上振れが見込まれる。仮に実績利益が2月時点の予想より5%上振れした場合、16年度のROEは8.5%となる。
3年ぶりにROEが改善する主な背景は2つある。ひとつは、4月後半から順次発表される16年度決算で、3年ぶりの増益が確実視されることだ。ROEを計算する分子の当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は、15年度の29.9兆円から16年度は31.5兆円に5.1%増える予想となっている(図3)。昨年11月の米大統領選後に進んだ円安が、輸出企業の利益を押し上げることが大きい。
もうひとつは、ROEを計算する分母の自己資本が減ったことが挙げられる。15年度は原油などの資源安と円高の影響で、商社などが多額の減損処理を実施した。また、上場企業全体で5.8兆円と、史上最大規模となった自社株買いも自己資本の減少に寄与した。これらの結果、16年度のROEを計算する(16年度初時点の)自己資本が、15年度初の392兆円から387兆円に減った。自己資本の減少によるROE押し上げ効果は0.1%ポイントと試算される。
今後の株式市場を展望するにあたって、日本企業の“稼ぐチカラ”を点検しよう。いうまでもなく、株価の根幹は企業業績だからだ。まず2016年度のROE(自己資本利益率、東証1部上場企業)は、目安とされる8%を回復する見込みだ(図3)。アベノミクス1年目に当たる13年度の9.3%をピークに2年続けて低下したが、3年ぶりの上昇となる。
ただし、これは3月期決算企業が第3四半期(2016年4~12月)決算を発表した時点の企業自身の見通しである。日本企業は業績見通しを保守的に出す傾向があることを考慮すれば、17年3月期の実績利益はもう一段の上振れが見込まれる。仮に実績利益が2月時点の予想より5%上振れした場合、16年度のROEは8.5%となる。
3年ぶりにROEが改善する主な背景は2つある。ひとつは、4月後半から順次発表される16年度決算で、3年ぶりの増益が確実視されることだ。ROEを計算する分子の当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は、15年度の29.9兆円から16年度は31.5兆円に5.1%増える予想となっている(図3)。昨年11月の米大統領選後に進んだ円安が、輸出企業の利益を押し上げることが大きい。
もうひとつは、ROEを計算する分母の自己資本が減ったことが挙げられる。15年度は原油などの資源安と円高の影響で、商社などが多額の減損処理を実施した。また、上場企業全体で5.8兆円と、史上最大規模となった自社株買いも自己資本の減少に寄与した。これらの結果、16年度のROEを計算する(16年度初時点の)自己資本が、15年度初の392兆円から387兆円に減った。自己資本の減少によるROE押し上げ効果は0.1%ポイントと試算される。
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本ファイナンス学会理事
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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