2017年03月21日

海外発の円高リスクがくすぶる~マーケット・カルテ4月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月見通し ドル円相場は、今月上旬に米利上げペースの加速期待からドルが買われ、一時115円台に乗せたが、15日のFOMCで利上げ加速が示唆されなかったことでドルが売られ、足元は112円台後半に下落している。

今後は円高方向に振れやすい時間帯に入る。米大統領選後にドル高材料となったトランプ政権の大規模な減税・インフラ投資については、具体像が未だ示されておらず、予算教書詳細版(5月公表予定)まで示されそうにない。一方、欧州では英国のEU離脱通告と仏大統領選を控えており、政治リスクが意識されることでリスク回避の円買いが入りやすくなりそうだ。また、4月には米国の為替報告書の公表があり、円安誘導批判への警戒が高まる可能性もある。従って、ドル円は一旦円高に振れ、5月頃からイベント通過に伴って過度の警戒が緩和することで、やや円安に戻ると見ている。3ヵ月後は現状比で横ばい圏と予想する。ちなみに、米国の大規模な減税・インフラ投資については、具体像が示されても、その後の協議難航・規模縮小への警戒から、ドル高材料にはなりにくいと見ている。

ユーロ円は足元121円台前半で推移。今後は5月にかけてますます政治リスクが警戒され、ユーロの下落圧力が強まりそうだ。ただし、今のところフランスでの反EU政権樹立は回避されるとみられること、ECBの緩和縮小が次第に意識されやすくなることから、ユーロの急落は考えにくい。3ヵ月後は現状比でやや円高ユーロ安に留まると予想。

長期金利は、近頃0.0%台後半での推移が続いている。今後はトランプ政権への期待が高まりにくいなかで、欧州政治リスクへの警戒から国債が買われ、長期金利は一旦低下すると予想。その後はイベント通過に伴って売り戻しが入ることでやや上昇し、3ヵ月後の水準は現状比でほぼ横ばいと見込んでいる。
(執筆時点:2017/3/21)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2017年03月21日「基礎研マンスリー」)

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