コラム
2017年03月21日

親と子どもの「結婚希望時期のズレ」の壁-未婚化・少子化社会データ検証:子の希望に立ちはだかる親の意識

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに

前回のコラム 「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方 では、34歳までの未婚男女の約6割が2歳程度までの年の近い異性との結婚をお互いに希望しており、4歳までの年の差の希望では双方7~8割にも達する、という「お互いに近い年齢の異性との結婚希望がトレンドである」という希望実態を示した。

また、34歳までの未婚女性の約8割が同じ年齢から4歳上までの男性を結婚相手に希望していることも明らかとなった。
 
では、そもそも「何歳において」の年の差結婚を未婚男女はイメージ(希望)しているのか、という疑問が次に出てくる。この希望についてデータをみてゆくと、そこには意外な「意識の壁」が存在していることが明らかとなった。
 
子どもの結婚には少なからず親の意見が影響を及ぼしている。

なぜなら、子どもにとって両親の姿は「最も身近な結婚のロールモデル」となりやすいからである。また、国の調査1では1年以内に結婚する場合の障害として「親の承諾」を挙げた未婚者が女性14.3%、男性8.5%ともなっており、結婚を決める際に親の考えがなにかしら影響している可能性は否定できないだろう。
 
本稿では、晩婚化がすすむ日本における「親と子どものそれぞれの結婚適齢期意識」についてデータ考察してみたい。親と子どもの結婚適齢期(希望時期)にもし乖離がある場合は、それが結婚の障害となる可能性がないとはいえないだろう。
 
データからは母親という立場でもある筆者にとって、少々残念な結果が現れた。親の結婚希望時期の意識の問題を、データとともに指摘してみたい。
 
1 社会保障・人口問題研究所(2016)「 第15回出生動向基本調査」

親はいつまでに結婚して欲しいと思っているのか

中学生から29歳までの未婚の子どもをもつ親は、一体、子どもに何歳ぐらいで結婚して欲しいと考えているのだろうか。

調査対象者1万4000名を超える民間の大規模調査2からは、母親と父親それぞれの息子・娘に対す結婚希望時期をうかがい知ることが出来る。
 
●娘に対する結婚希望時期は?
 
娘に対して父親は
 1位 20代後半(までに結婚して欲しい) 47.0%
 2位 30代前半 20.9%
で1位は2位の2倍以上となっている。やはり娘には男親は20代で結婚して欲しいようである。
 
次に、母親は
 1位 20代後半 44.9%
 2位 30代前半 21.3%
でやはり1位が2位の2倍以上である。娘の結婚時期の希望に関しては、母親と父親の希望は「20代後半まで」でほぼ一致しているといってよい。
 
●息子に対する結婚希望時期は?
 
息子に対して父親は
 1位 20代後半(までに結婚して欲しい) 36.5%
 2位 30代前半 32.9%
で、僅差であるものの、20代での結婚を多くの父親が願っているようである。
 
次に母親は、
 1位 30代前半 36.7
 2位 20代後半 25.0%
 
となっており、30代に入ってからの息子の結婚希望が20代での結婚希望に10ポイント以上の大差をつけている。

父親から息子・娘とも20代の結婚希望が1位、母親から娘への20代での結婚希望が1位である中で、母親から息子への結婚希望だけが30代で結婚希望が多数派となっているところがデータ的に非常に目立つところである。
 
 
2 (株)明治安田生活福祉研究所・㈱きんざい(2016)「親子の関係についての意識と実態」
 親調査:全国の35~59 都市の男女(中学生~29 年の子を持つ親)
 子調査:全国の15~29 歳の未婚男女(高校生・専門学校生・大学生等・社会人)
 調査方法: WEB アンケ-ト調査(株式会社マクロミルの登録モニタ-)
 調査時期: 2016 年3 月16 日~3 月23 日
 回収数:親調査…9,715 名・子調査…5,803 名

子どもはいつまでに結婚したいと思っているのか?

親のデータで使用した同じ大規模調査によると、「いつまでに結婚したいか」15歳から29歳の未婚男女に尋ねたところ、

未婚女性 
 1位 20代後半(までに結婚したい)58.1%(約6割)
 2位 30代前半 21.5%

未婚男性 
 1位 20代後半 46.2%(約5割)
 2位 30代前半 31.6%

となっており、子どもサイドは男女とも「20代後半までに結婚したい」という20代での結婚希望回答が2位の30代前半と大差の1位であった。
20代後半までに結婚したい
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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