2017年03月13日

【2月米雇用統計】雇用者数は2ヵ月連続で20万人超の増加。失業率、賃金も改善しており、3月の利上げは確実。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者増加数は市場予想を上回り、2ヵ月連続で20万人超

3月10日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で23.5万人の増加1(前月改定値:+23.8万人)となり、上方修正された前月からは伸びが鈍化したものの、市場予想の+20.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を上回り、2ヵ月連続で20万人超の大幅な増加となった(後掲図表2参照)。

失業率は4.7%(前月:4.8%、市場予想:4.7%)とこちらは前月から低下、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率2は63.0%(前月:62.9%)と、こちらは3ヵ月連続の改善となった(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:全般的に改善。文句の付け様のない結果で3月利上げは確実

2月の非農業部門雇用者数が2ヵ月連続で20万人超となった結果、12-2月の月間平均増加数は+20.9万人と、9-11月の同+17.9万人から加速した。労働市場が完全雇用に近づく中で20万人超のペースを維持するのは難しいと考えていたが、2月の気温が観測史上2番目に高かったことが建設労働者の大幅な増加などに影響したようだ、いずれにせよ、足元で雇用増加ペースが加速していることは間違いない。

一方、家計調査も失業率、労働参加率が前月から改善しており、事業所調査と併せて労働需給の改善を示す結果となった。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 また、1月に予想外の伸び鈍化となった時間当たり賃金(全雇用者ベース)も、2月は前月比+0.2%(前月改定値:+0.2%、市場予想:+0.3%)と上方修正された前月に一致した。さらに、前年同月比は+2.8%(前月改定値:+2.6%、市場予想:+2.8%)と、上方修正された前月から加速しており、賃金も明確に回復した(図表1)。

このようにみると、雇用増加ペースの加速に留まらず、失業率、賃金全てが前月から改善しており、文句の付け様のない結果であったと言える。

金融市場では既に、FRBによる3月の政策金利引き上げがほぼ織込まれているが、2月の雇用統計を受けて、3月利上げは確実だろう。

3.事業所調査の詳細:建設業をはじめ広範な業種で雇用が増加

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+13.2万人(前月:+16.7万人)となった(図表2)。

サービス部門の中では、小売業は前月比▲2.6万人(前月:+4.0万人)と前月から減少したものの、専門・ビジネスサービスが+3.7万人(前月:+4.6万人)と底堅い伸びとなったほか、医療サービスが前月比+2.7万人(前月:+1.2万人)と前月から伸びが加速した。

財生産部門は、前月比+9.5万人(前月:+5.4万人)と前月から伸びが加速し、00年3月(+9.6万人)に次ぐ増加となった。製造業が+2.8万人(前月:+1.1万人)と3ヵ月連続で増加したほか、建設業が+5.8万人(前月:+4.0万人)と、07年3月(+8.0万人)以来の伸びとなった。建設業の伸びは天候要因が影響した可能性が高い。

政府部門は、前月比+0.8万人(前月:+1.7万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、連邦政府が+0.2万人(前月:+0.4万人)となったほか、州・地方政府が+0.6万人(前月:+1.3万人)といずれも前月から伸びが鈍化した。

前月(1月)と前々月(12月)の雇用増(改定値)は、前月が+23.8万人(改定前:+22.7万人)と+1.1万人上方修正された一方、前々月が+15.5万人(改定前:+15.7万人)とこちらは▲0.2万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+0.9万人の上方修正となった(図表3)。
 
なお、BLSの公表に先立って3月8日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が前月比+29.8万人(前月改定値:+26.1万人、市場予想:+18.7万人)と、14年4月(+33.1万人)に次ぐ水準となり、前月、市場予想を大幅に上回った。前月から小幅に伸びが鈍化した雇用統計とは異なる動きとなったものの、水準は両者ともに20万人超となっており、整合的な結果と言える。
 
2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.09ドル(前月:26.03ドル)となり、前月から+6セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は897.50ドル(前月:895.43ドル)と前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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