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日本初の「クリエイティブリユース」の拠点とは?-倉敷玉島のまちに息づく“創造の源”を訪ねて
社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
3――交流を深める滞在機能
付近の畑を通りかかった時に、畑作業をする方と大月さんが言葉を交わす場面が印象に残った。一応、ゲスト扱いしてくれた筆者への対応とまったく異なる気さくなやり取りは、古くから知った仲といった感じで、ご近所づきあいそのもの。それを見て分かったのは、大月さんが、地域の人と、遠方からここにやってくる人の取り持ち役になり、両者をつないでいるだろうことだ。
外から多くの人が訪問する施設にとって、この役割は重要だと思う。ここで生まれ育った大月さんだからこそ、それが自然にできるのだろう。
4――まち自体の圧倒的な魅力が創造する楽しさを刺激する
点在する水門や特徴的な佇まいの建物、昭和を感じさせる商店街、その商店街に通じる幾筋かの路地、かつての繁栄を偲ばせる歴史的街並み。目を奪われる景観が次々に現れ、いちいち立ち止まらなければならない。観光地的なにおいがしない落ち着いた雰囲気もこのまちの魅力だ。
溜川(ためがわ)の岸辺に建つ長屋の通路越しに見る水面、その水面に架かるドラム缶橋から眺めた風景は、帰りの時間を忘れて、しばらくここにいたい気持ちを抑えることができなかった。
そこで、ようやく気が付いた。ここに滞在していた方々の、一様に楽しげな理由が。創造的な活動を行うことや、人とのコミュニケーションが楽しいだけでなく、みんな、玉島のまちの魅力も含めて滞在を楽しんでいるのだ。初めて会った筆者にも、とてもフレンドリーに接してくれ、帰りにやけに温かく見送ってくれたのは、「きっとあなたもこのまちを好きになる」と心でつぶやいていたのではないかと思えてきた。
短時間の訪問を終えて、おそらく大月さんは、家の歴史と玉島という地域の歴史、その文脈の上でIDEA R LABとマテリアルライブラリーを形にしたのだと感じている。歴史ある生家を、私費を投じてこのような場にしたことで、訪問する人に創造する楽しさを感じさせ、その雰囲気は、地域にも好ましい影響を与えているはずである。
ここにも個人の私的な思いで始めたことが、人々の共感を呼び、地域にとって価値あるものとなっていく状況がある。そんなことを考えながら、また玉島に行きたいとうずうずしているのである。
03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
(2017年03月08日「基礎研レター」)
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