2017年03月07日

マイナス金利下における国内債券運用

千田 英明

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5――おわりに

現在保有しているマイナス利回りの債券の運用について、及び、ロールダウン効果について合わせて考えた場合、将来の金利低下が見込まれるかどうかが、マイナス金利で投資、又は、保有を継続すべきかどうかを判断する際のポイントになると考えられる。マイナス金利でもイールドカーブがスティープ化していて、そのイールドカーブが長期間動かなければ、時間の経過により金利は低下するためプラスの収益が見込まれる。イールドカーブがスティープ化していなくても、更に金利低下が見込まれるのであれば、一定期間はプラスの収益が見込まれる。

ただし、将来の金利低下が見込まれていても、残存期間が短い場合はプラス収益を獲得することが非常に難しくなる。その損益分岐点はどこにあるのか。イールドカーブスティープ化の形状、残存期間、金利水準などにより変わってくるため、イールドカーブが直線で0%以下にある場合について、そのマイナス金利水準、残存期間、スティープ化の角度を変えて比較した。図表10は1年間マイナス利回りの債券に投資した場合の損益を示している。イールドカーブが直線で1年間動かないと仮定し、その角度や水準を変えたものに投資している。投資する年限により損益が変わるが、残存年数の長い債券に投資するほど、損益が大きくなる様子が分かる。また、スティープ化の角度が大きいほど、残存年数の差による損益の差も大きくなった。そして、その損益分岐点は、イールドカーブ上の0%以下のゾーンで、残存年数が中間地点より長い債券に投資すれば、プラス収益を得られることが分かる(図表11)。
図表10:マイナス金利イールドカーブにおけるロールダウン効果の損益分岐点/図表11:ロールダウン効果でプラス収益を得られるゾーン
日銀の物価目標達成予想は2018年度以降となっている。少なくともそれまでは緩和が継続すると考えられ、残存10年以下の金利が大きく変動する可能性は低い。更に、現在のイールドカーブは日銀が目標としている金利水準の上限に近いと考えられ、金利は低下することはあっても上昇する可能性は低いと考えられる。現在の国内債券マーケットは、投資年限や投資期間を適切に選択すれば、大きな収益は期待できないかもしれないが、安定して運用できる余地がまだ残っていると考えられる。代替投資手段を検討することも必要であるが、国内債券も含めてリスクを取り過ぎないように適切に運用していくことも必要であろう。
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千田 英明

研究・専門分野

(2017年03月07日「基礎研レポート」)

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