2017年03月03日

金相場の先行きはどうなる?~金融市場の動き(3月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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2.日銀金融政策(2月):日銀の米国への強い関心があらわに

(日銀)現状維持(開催無し)
2月はもともと決定会合が予定されていない月であったため、必然的に金融政策は現状維持となった。
 
2月8日に公表された「金融政策決定会合における主な意見(1月開催分)」では、多くの政策委員が、「米国の政策運営や欧州の政治情勢を巡る不透明感が強い」との認識を示していたことが明らかとなった。また、金融政策に関しては、2%の物価目標に距離があること、海外経済を巡る不確実性があることから、「現在の政策方針を堅持することが重要」との意見が複数あった。一方で、米長期金利が大幅に上昇すると、「金利操作は一層困難度合いが高まる」との指摘もあった。
 
また、黒田総裁は22日の衆院財務金融院会において、「為替レートの動きが経済・物価に影響を与えるのは事実」とする一方で、「円安が進行しなくとも、需給ギャップの改善や期待インフレ率の高まりなどを通じて、物価は着実に上昇率を高めていく」と言及した。日銀の金融緩和に対する米国からの円安誘導との批判をかわす狙いがあったとみられる。
 
米大統領選後の円安進行と底堅い原油価格はともに物価の上昇に作用するため、日銀が追加緩和を迫られる可能性は大きく低下している。一方で、2%の物価目標は依然として非常に遠いため、出口戦略を視野に入れる段階にもない。従って、日銀は長期にわたって現行金融政策の維持を続けるだろう。長期金利目標の明示的な引き上げも時期尚早(市場動向によっては許容レンジを若干引き上げていく対応は有り得る)。ただし、現在年間約80兆円増としている国債買入れペースについては、市中残存額との関係で長期には続けられないため、今年中に減額や柔軟化を開始する可能性が高い。
次回の金融政策変更の予測分布(39機関)/長短金利操作の見通し

3.金融市場(2月)の動きと当面の予想

3.金融市場(2月)の動きと当面の予想

(10年国債利回り)
2月の動き 月初0.0%台後半からスタートし、月末は0.0%台半ばに。    
月初、日銀の国債買入れオペに対する不透明感が嫌気される中、国債入札が低調な結果となったことで、2日に0.1%を突破。翌3日には一時0.15%に到達したが、日銀による指値オペ実施を受けて0.1%に低下。その後も日銀オペに対する不透明感から0.1%弱での推移が続いたが、下旬には順調な入札結果や早期利上げ観測後退に伴う米金利低下、「日銀がオペ実施日の事前通知を検討」との報道を受けて低下基調となり、月末は0.0%台半ばで終了した。

当面の予想
今月に入り、米国の3月利上げ観測に伴う米金利上昇を受けて金利上昇圧力が高まり、足元では0.0%台後半で推移している。当面は3月利上げ観測や米景気刺激策への期待から米金利が上振れしやすく、本邦長期金利も上昇しそうだ。一方、日銀のオペ事前通知開始が国債の買い安心材料になっているほか、金利の大幅な上昇は日銀が許容しない(指値オペ等で抑制にかかる)とみられるため、0.1%を超えて上昇することは想定しにくい。
日米独長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化/日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(2月)
(ドル円レート)
2月の動き 月初113円からスタートし、月末は112円台後半に。
月初、米雇用統計を受けた早期利上げ観測の後退や、日米首脳会談での円安けん制に対する警戒から7日に111円台まで円高が進行。その後、日米首脳会談を無風で通過したことで安心感が広がり、13日には113円台後半に。さらに、ややタカ派的となったイエレンFRB議長の議会証言を受けた15日には114円台にドル高が進行。しかし、22日のFOMC議事要旨を受けて早期利上げ観測が後退したことから、終盤はややドルが売られ、月末は112円台後半で終了した。

当面の予想
今月に入り、トランプ大統領の議会演説が無難な内容で過度の警戒が後退したこと、米国の3月利上げ観測が急速に高まったことからドルが上昇し、足元では114円台前半にある。今月中に公表されるとみられる米予算教書での減税・インフラ投資具体化への期待が、ドルの支援材料になるほか、最近相次ぐFRB高官のタカ派発言で俄かに現実味を増してきた3月の利上げ観測もドル高を促す材料になりそうだ。当面は一旦115円台を試すと見ている。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
2月の動き 月初1.07ドル台後半からスタートし、月末は1.05ドル台後半に。
月初、1.07ドル半ばから1.08ドル付近で推移した後、仏大統領選への懸念が高まり、7日には1.06ドル台後半に下落。さらに、イエレン議長のタカ派的な議会証言を受けた15日には1.05ドル台後半まで下落した。その後、利益確定のユーロ買戻しや米利上げ観測の後退がユーロの上昇圧力となったが、欧州の政治リスクへの警戒が上値を押さえ、月末にかけて1.05ドル~1.06ドル付近での一進一退が続いた。

当面の予想
今月に入り、米3月利上げ観測の上昇を受けて、足元では1.05ドル台前半で推移している。今後も米国の3月利上げ観測、トランプ氏の景気刺激策への期待、オランダ・フランスの選挙への警戒から、ユーロドルには下落圧力がかかるだろう。当面は1.05ドルを割り込む可能性が高い。ただし、現実にはオランダ、フランスにおいて反EU派が政権を樹立するハードルは高いことから、ユーロが底割れる展開となる可能性は低い。
金利・為替予測表(2017年3月3日現在)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2017年03月03日「Weekly エコノミスト・レター」)

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