2017年03月03日

消費者物価(全国17年1月)~コアCPI上昇率は15年12月以来のプラス

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPIは13ヵ月ぶりのプラス

消費者物価指数の推移 総務省が3月3日に公表した消費者物価指数によると、17年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(12月:同▲0.2%)と13ヵ月ぶりのプラスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:0.1%、当社予想は0.0%)通りの結果であった。

物価動向のより適格な把握に資する観点から今月から公表が開始された「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は前年比0.2%(12月:同0.1%)、総合は前年比0.4%(12月:同0.3%)であった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(12月:前年比▲6.5%→1月:同▲5.6%)、ガス代(12月:前年比▲7.7%→1月:同▲7.4%)の下落幅が縮小、灯油(12月:前年比0.0%→1月:同19.7%)、ガソリン(12月:前年比1.6%→1月:同11.2%)が前年比で二桁の大幅上昇となったことから、エネルギー価格の下落率が12月の前年比▲4.4%から同▲0.8%へと大きく縮小した。

既往の円高による輸入物価下落の影響などから、鈍化傾向が続いていた生鮮食品を除く食料(12月:前年比0.5%→1月:同0.6%)、被服及び履物(12月:前年比0.6%→1月:同1.1%)の上昇率が高まったこともコアCPIを押し上げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.06%(12月:▲0.34%)、食料(生鮮食品を除く)が0.14%(12月:0.12%)、その他が0.02%(12月:0.03%)であった。

2.東京都区部のコアCPIはマイナスが続く

17年2月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.3%(1月:前年比▲0.3%)と12ヵ月連続の下落となり、下落率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.2%、当社予想も▲0.2%)を下回る結果であった。

電気代(1月:前年比▲7.7%→2月:同▲5.9%)、ガス代(1月:前年比▲12.3%→2月:同▲10.9%)の下落幅が縮小し、ガソリン(1月:前年比12.1%→2月:同15.1%)、灯油(1月:前年比15.2%→2月:同16.4%)の上昇幅が拡大したことから、エネルギー価格の下落幅が1月の前年比▲6.8%から同▲5.1%へと縮小した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解 一方、家具・家事用品(1月:前年比0.2%→2月:同▲0.4%)が下落に転じたこと、テレビ、ビデオカメラなどの教養娯楽用耐久財(1月:前年比▲3.1%→2月:同▲4.9%)の下落幅が拡大したことなどがコアCPIを押し下げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.27%(1月:▲0.36%)、食料(生鮮食品を除く)が0.09%(1月:0.11%)、その他が▲0.12%(1月:▲0.05%)であった。

3.コアCPI上昇率は17年度入り後には0.5%程度に

円安、原油高の進展を受けて、エネルギー価格の下落率は縮小傾向が明確となっている。東京都区部のエネルギーは下落が続いているが、全国は特に上昇率の高いガソリン、灯油のウェイトが高いため、2月には前年比でプラスに転じる公算が大きい。エネルギーによるコアCPI上昇率の押し上げ寄与は17年度入り後には0.3%程度まで拡大するだろう。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 また、既往の円高による物価下押し圧力は残っているものの、足もとのドル円レートはすでに前年とほぼ同水準となっており、夏頃からは円安が物価の押し上げ要因となることが見込まれる。現時点では、全国のコアCPI上昇率は17年度入り後にはエネルギー価格の上昇、円高による下押し圧力の一巡などから0.5%程度まで伸びが高まると予想している。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年03月03日「経済・金融フラッシュ」)

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