2017年02月20日

【タイGDP】10-12月期は前年同期比+3.0%~国王死去後の自粛ムードで減速

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2016年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比3.0%増1と、前期の同3.2%増から低下したものの、Bloomberg調査の市場予想(同3.0%増)と一致する結果となった。

なお、2016年通年の成長率は前年比3.2%増(前年:同2.8%増)と、2年連続で上昇し、16年2月に政府が公表した成長率予測3.0-3.5%の範囲内に収まった。

需要項目別に見ると、民間消費とサービス輸出の鈍化が成長率の低下に繋がったことが分かる(図表1)。

民間消費は前年同期比2.5%増と、前期の同3.0%増から低下した。プミポン元国王の死去を背景に、黒い衣服が大量に売れたことで衣類(半耐久財)が上昇したものの、自粛ムードの広がりを受けて食品・飲料(非耐久財)や自動車(耐久財)が落ち込んだ。政府消費は同1.5%増(前期:同5.2%減)と、2期ぶりのプラスに転じた。10月に始まった新年度予算の執行が加速して財・サービスの購入を中心に上昇した。

また投資は同1.8%増と、前期の同1.0%増から上昇した。投資の内訳を見ると、民間投資が同0.4%減(前期:同0.8%減)と、住宅購入支援策の終了(4月)の影響やトラックやバスなど商用車の輸出の不調を受けて建設投資と設備投資が揃って低迷した。公共投資は同8.6%増(前期:同5.8%増)と、インフラプロジェクトの進展により公営企業の建設投資を中心に上昇した。

純輸出は、まず輸出が同1.1%増(前期:同1.4%増)と低下した。うち財貨輸出は同1.4%増(前期:同0.4%減)と上昇した。中東向けの自動車の輸出が落ち込んだものの、中国向けのゴムやアフリカ向けのコメ、日本・米国向けのエビなど一次産品の輸出が改善したほか、家電製品や石油製品など工業製品の輸出も拡大した。しかし、サービス輸出は同0.4%増(前期:同7.7%増)と、訪タイ外国人観光客数の落ち込みを受けて低下した(図表2)。一方、輸入は同3.4%増(前期:同1.1%減)と上昇し、6期ぶりのプラスに転じた。うち財貨輸入(同3.6%増)は工業製品の輸出の改善を受けて原油や金属、化学製品、半導体などの中間財を中心に上昇したほか、サービス輸入(同2.1%増)も上昇した。その結果、外需の成長率への寄与度は▲1.4%ポイントと、前期の+1.9ポイントから減少した。
(図表1)タイの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)タイの外国人観光客数

供給項目別に見ると、サービス業の鈍化が成長率の低下に繋がったことが分かる(図表3)。

農林水産業は前年同期比3.2%増(前期:同0.9%減)と、2期連続で上昇した。エルニーニョ現象を背景とする干ばつの影響が和らいでコメやキャッサバ、パーム油など主要の農産品を中心に増加した。また漁業は同5.4%増と、エビの海外需要の拡大を受けて好調を維持した。

非農業部門では、まず製造業が同2.1%増(前期:同1.6%増)と上昇した。製造業の内訳を見ると、外国人旅行者数の落ち込みを受けて食料・飲料などの軽工業が落ち込み、自動車の商用車の輸出が不調で資本・技術関連産業も鈍化した一方、出版・印刷や石油製品など素材関連が拡大した。また建設業は同6.1%増(前期:5.2%増)と、インフラ計画の進展を受けて公共部門を中心に再び上昇した。

全体の6割弱を占めるサービス業では、卸売・小売業が同5.6%増(前期:同5.2%増)、金融業が同6.7%増(前期:同5.8%増)、不動産業が同1.8%増(前期:同1.1%増)と上昇したものの、外国人旅行者数の落ち込みを受けてホテル・レストラン業が同4.8%増(前期:同13.5%増)、運輸・通信業が同5.1%増(前期:同6.5%増)と低下した。
(図表3)タイ実質GDP成長率(供給側)/(図表4)タイの企業景況感と消費者信頼感

(10-12月期GDPの評価と先行きのポイント)
10月13日のプミポン元国王の死去に伴い、企業は販促イベントを自粛し、消費者の間では娯楽消費を控える動きが広がった。さらには、タイ政府が違法に運営している中国系旅行会社の取り締まりを強化したことも加わり、10-12月期の訪タイ外国人旅行者数は前年同期比0.9%減と、軍事クーデターの影響で落ち込んだ2014年7-9月期以来のマイナスを記録した。景気減速が懸念されたが、政府が年末に実施した所得控除策2や農業生産の改善に伴う農業所得の増加などが消費を支え、成長率(前年同期比)の低下幅は7-9月期から0.2%ポイントと小幅に止まった。

景気は2四半期続いて減速したものの、今後は上向くだろう。年明けに元国王の死去後100日が経過して民間の自粛ムードが和らぐなか、消費者のマインドは上向きに転じており(図表4)、外国人観光客の回復も期待できる。また政府は地方振興に向けた総額1,900億バーツの補正予算を編成して景気浮揚に向けて動いているほか、農業生産は昨年エルニーニョ現象の影響で落ち込んだ反動増が見込まれ、農業所得の回復傾向も続くと予想される。さらには、海外経済の緩やかな改善によって輸出の増加基調が続けば、冷え込んだ民間投資にも明るい兆しが見えてくるだろう。

先行きの懸念は、当面は米国の保護貿易措置に伴う輸出の落ち込みやFRBの追加利上げに伴う新興国からの資金流出など海外要因が中心だが、その後は王位を継承したワチラロンコン新国王の治世のもとタクシン派と反タクシン派の対立が新たな展開を迎えるかどうかに注目が集まるだろう。年末頃には総選挙が実施され、民政移管がなされる予定だ。スムーズに事が運ばなければ、新国王の求心力が試される展開も予想される。
 
 
1 2月20日、タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は2016年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。なお、前期比(季節調整値)の実質GDP成長率は0.4%増と前期の同0.6%増から低下した。
2 政府は(1)12月中の国内旅行関連費用に対する所得控除(上限15,000バーツ、昨年の同様の施策による控除を受けていない場合は上限30,000バーツ)、(2)年末(14~31日)の物品・サービスの購入額に対する所得控除(上限15,000バーツ)を実施した。なお、政府は16年4月にソンクラーンに伴う9日間の休暇中の飲食・旅行費用を対象に所得控除策(上限15,000バーツ)を実施している。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2017年02月20日「経済・金融フラッシュ」)

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