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- 仙台オフィス市場の現況と見通し(2017年)
4. 仙台の新規供給・人口見通し
仙台市は若年層の集積度が高い都市である。高校卒業後の若者の流入により17歳から19歳にかけて人口が1.4倍に急増している(図表-12)。ただし、流入した若者は必ずしも仙台市に定着せず、その数年後には転出超過に転ずることもあり(図表-13)、19歳を小さなピークとする特徴的な人口ピラミッドが形成されている。
仙台市の人口の転出入は、東日本大震災後にそれまでの転出超過傾向(▲数百人程度)から、大幅な転入超過へと転換した。2011年以降、転入超過数はしだいに縮小し、2016年は+615人と2012年(+9,284人)の6.6%となった(図表-14)。仙台市のオフィス賃貸面積の増減は、転入超過数との関連性がみられるため(図表-15)、オフィス需要の減少が懸念されていたが、複数のIT系企業の進出がオフィスの需要の減少を回避させる方向に働いたと考えられる。
2010年から2015年にかけて、仙台市では大幅に人口が増加しだ。ただし、生産年齢人口は減少が続いており、現時点での予測では、今後もその傾向は継続すると予測されている(図表-16)。
5. 仙台のオフィス賃料見通し
仙台の成約オフィス賃料は、新規供給の少なさとIT系企業などの企業進出を背景に、今後も上昇が続くと予測された(図表-17)。標準シナリオによると、2016年下期から2020年(下期、以下同じ)までに+15.5%上昇(2016年下期比)した後に下落に転じ、2023年には同+8.0%になるという結果となった6。
当面の賃料上昇のピークまでの上昇率は、楽観シナリオで+24.5%(2016年下期比)、悲観シナリオで同+5.0%、2023年の賃料は楽観シナリオで同+17.5%、悲観シナリオで同▲4.8%だった。
5 ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2016~2026年度)」2016.10.14、斎藤太郎「2016~2018年度経済見通し~16年7-9月期GDP2次速報後改定」2016.12.8などを基に、今後の実質GDP成長率見通しを設定した。
6 仙台市の成約賃料は、2016年下期に前年比で▲7.9%の下落だったため、2020年のピークは2015年下期比では+6.4%となる。
6. おわりに
仙台市の人口に関する最大の問題のひとつは、高校卒業後に大学や専門学校への入学で仙台市に流入してきた若者が定着せずに、就職やUターンなどで数年後には市外に転出してしまうことであった。現在ではわずかながら転入超過の状況にあるが、今後再び、震災前と同様に転出超過に転ずる可能性もある。今回のIT系企業の進出8は、仙台における若者の就業と定着をもたらす可能性という点で、オフィス市場にとっても重要な意味を持つと思われる。
このように仙台のオフィス市場はIT系企業の進出で環境が大きく変化した。現在、こうしたIT系企業のさらなる進出への期待が高まっている。ただ、そのためには、新規の進出企業を受け入れるオフィスビルが不可欠である9。1990年代半ば以降の仙台のオフィス市場では、新規供給が特定の期間に集中し、それに伴う供給過剰でその後は新規供給がストップするというサイクルが現在を含め2度発生しており(図表-18)、現時点では2018年以降の新規供給の予定がない(図表-11)。IT系企業の進出の流れを継続させ、仙台のオフィス市場が着実に成長するためにも、築古ビルの再開発を含め、安定した新規供給が続くことが望まれる。
7 河北新報「全国から進出 ITベンチャー企業 仙台 顧客支援拠点に」(2016.10.22)
8 仙台市内の若年層の人材の豊富さに加え、仙台市による企業立地への助成補助金の拡充(2016年4月より) なども要因になったという。助成制度については仙台市「企業立地促進助成金の概要」を参照のこと。
9 仙台がこれらIT系企業のカスタマーサポートセンターとしての進出先として選ばれた理由のひとつに、コールセンター立地の一大拠点である札幌市をはじめとする他の主要都市において、好立地の築浅ビルにコールセンターなどが入居できる空室がほとんど残っていないという背景もあったのではないかと考えられる(図表-1都市別空室率参照)。現在みられるIT系企業の進出の流れを止めないためにも、一定程度の新規のオフィスビル供給が続くことが重要と思われる。
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竹内 一雅
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(2017年02月20日「不動産投資レポート」)
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