2017年02月16日

ペットとまちづくり~被災時の対策から考える~

社会研究部 土地・住宅政策室長 篠原 二三夫

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3| ペットの人社会における意義と役割
インターネットに基づく全国犬猫飼育実態調査結果によると、次のように、人々は、犬や猫などのペットを飼うことによって、それ以前と比べると、情緒、コミュニケーション、健康などの面において、様々な効用を受けていることが報告されている。ペットは、こうした観点からも、人々の生活や社会環境において重要な役割を担うため、人と同様に、ペットも防災や減災の枠組みに含めて制度整備を行う必要があるし、被災時においても、生あるものとして、共に困難を乗り越えられる環境を実現するように努力すべきというのが国や地方公共団体の考え方であり、筆者としても共感するところがある。
表2 ペットを飼うことによる効用

3――国によるガイドライン

3――国によるガイドライン

災害時におけるペットの救護対策に関する国のガイドラインは前述のように環境省が策定し公表している。自治体等が行う救護対策に関することが中心となっており、平常時からの対応を含め、その概要は表3の通りである。
表3 災害時におけるペットの救護対策に関する国のガイドラインの概要
消費者にとって注目すべきは、「飼い主が行う対策の例」の部分である。原則として、すべては飼い主の自己責任において対応すべきこととなっている。特に、避難所では他の避難者の迷惑にならないように、飼い主は普段から適切な準備を行うことが大切であることが案内されている。

また、環境省が、区市町村の役割をどう考えているのかという点も注目点である。基本的な区市町村の役割は、市民が自己責任で行う対策の普及啓発が中心とされているが、重要なのはペット同行避難者の避難所や仮設住宅への受け入れ対策を講じることや関連情報の提供についてである。これは被災現場となる自治体にとっては、東日本大地震や熊本地震の経験からすると、大規模災害の場合には、大きな課題となる。特に飼い主に対し、ペットとの「同行避難」を推進しても、他人がいる避難所でのペットとの「同伴避難」はどの自治体でも認めていない現実を、飼い主及びペット(当然だが)は理解してないことが現場対応としては難しい点である。実際の災害時には飼い主は自らの対応に精一杯になることは、ある程度やむを得ず、放浪するペットが増えることも大きな論点である。

なお、環境省は「備えよう!いつもいっしょにいたいから」と題した、災害時にペットと一緒に避難するために、普段から備えておくことや、避難所等で気を付けることなどをまとめた飼い主向けパンフレットを配布しているのでご紹介する。
■図7 環境省による平常時と災害時の対応策の具体例
■図7 環境省による平常時と災害時の対応策の具体例
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社会研究部   土地・住宅政策室長

篠原 二三夫 (しのはら ふみお)

研究・専門分野
土地・住宅政策、都市・地域計画、不動産市場

経歴
  • 【職歴】
     1975年 丸紅(株)入社
     1990年 (株)ニッセイ基礎研究所入社 都市開発部(99年より社会研究部門)
     2001年より現職

    【加入団体等】
     ・日本都市計画学会(1991年‐)           ・武蔵野NPOネットワーク役員
     ・日本不動産学会(1996年‐)            ・首都圏定期借地借家件推進機構会員
     ・日本テレワーク学会 顧問(2001年‐)
     ・市民まちづくり会議・むさしの 理事長(2005年4月‐)
     ・日米Urban Land Institute 国際会員(1999年‐)
     ・米国American Real Estate Finance and Economics Association国際会員(2000年‐)
     ・米国National Association of Real Estate Investment Trust国際会員(1999年‐)
     ・英国Association of Mortgage Intermediaries準国際会員待遇(2004年‐)
     ・米国American Planning Association国際会員(2004年‐)
     ・米国Pension Real Estate Association正会員(2005年‐)

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