2017年02月14日

米国では、人々はどのように生命保険に加入しているのか(4)-リムラ&ライフハプンズの保険バロメータースタディより-米国の人々が好ましいと考える生命保険販売チャネルとは-

松岡 博司

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3|『オンライン販売』への階層別支持状況
一般には若者ほど、人が関与する方法よりもオンラインであっさりと購入することを好むと考えがちであるが、米国における生命保険購入方法への態度を見る限りではそうとも言い切れないようだ。

グラフ2は、『対人販売』と『オンライン販売』それぞれを生命保険加入のチャネルとして最も好ましいとする回答者の割合をさまざまな階層別に比べたものである。「65歳以上」のシニア層が『対人販売』を支持する割合が最も高く『オンライン販売』を支持する割合が最も低いことはわかりやすい。

『オンライン販売』の今後を占う上では、「生命保険未加入者」の方が「生命保険加入者」よりも『対人販売』支持の割合が低く『オンライン販売』支持の割合が高いことは明るい材料であろう。一方、これからの主要マーケット層である「18歳~35歳」層が『対人販売』支持率で最小を示している反面、『オンライン販売』支持率が平均程度に留まっていることが不安材料であろう。
グラフ2 生命保険加入チャネルとして最も好ましい方法 米国
4|インターネットの使われ方
グラフ3は生命保険加入プロセスにおいてインターネット、オンラインをどのように活用するかについての調査結果回答である。

「リサーチから購入の完了まで全てをオンラインで行う」とする回答者は22%にすぎず、「オンラインでリサーチする。しかしファイナンシャルアドバイザーまたはエージェントから購入する」とする回答者が49%とほぼ過半数を占める。また「オンラインでリサーチする。しかし電話または郵便を使って保険会社から直接、購入する」とする回答者も17%いる。

『オンライン販売』が生命保険販売の中心チャネルとして君臨する日はまだ先のようである。

興味深いのは、ミレニアル世代と呼ばれる「18歳~35歳」層の「オンラインでリサーチする。しかしファイナンシャルアドバイザーまたはエージェントから購入する」とする回答者の割合が57%とひときわ高いことであろう。この層は、生命保険に関する知識・経験に関して、他の世代よりも劣っているとの自覚があり、専門家に質問をして答えてもらうことの価値を人一倍感じているようである、というのがリムラ&ライフハプンズの見立てである。

昨今注目を浴びているフィンテックは、米国におけるミレニアル層の既存金融機関への不満と、スマホ等手頃なITデバイスの普及が相まって始まったとされる。フィンテックにおけるこうしたミレニアル層の反乱は、まだ、生命保険には及んでいないようである。
グラフ3 生命保険加入におけるインターネット、オンラインの活用方法

さいごに――「生命保険購入場所として許容できる場所」の調査結果から

さいごに――「生命保険購入場所として許容できる場所」の調査結果から

次のグラフ4は、これまでと趣を変え、消費者が「生命保険購入場所」として許容できる場所についての調査結果である。この質問事項はもともとバロメータースタディにおいて代替的な販売チャネルについて聞く質問として始まったもので、今でもそうした色合いを帯びている。

調査結果を見ると、「保険会社のウェブサイト」が47%の支持を集め、最も人気のある保険購入場所となっている。生保会社にとっては灯台もと暗しというところか。

続いて、職場」が43%の支持を集め第2位である。これは分かりやすい。企業従業員向けの団体保険にさらに注力する生保会社も現れるかも知れない。

「AARPのようなアフリエイト組織(何らかの会員組織が、会員向けに保険販売の仲介等も行うもの)」が41%と40%超えを達成している。膨大な会員数の高齢者団体であるAARPでは、会員が所属団体AARPに信頼と忠誠心を持っていて、推奨されれば保険販売すら受け入れられるということだろう。とは言え、AARPに次ぐ、そのような団体を組織することはなかなか難しそうである。

続いて「銀行(対人またはオンライン)」が25%の支持を集めている。銀行は生保会社の新興チャネルとして既に一定の地位を確立しているが、個人年金の販売チャネルとしての位置付けが強い。生命保険販売では微々たるシェアに甘んじている。

これらに次いで、「保険料試算サイト(SelectQuote.com等)」、「会員制大型ディスカウントストア(コストコ等)」、「スーパーマーケット(ウォルマート等)」、「その他の小売り店舗(セブンイレブン等のコンビニ等)」、「その他のオンラインサイト(アマゾン、グーグル等)」等が並んでいる。

ディスカウントストア、スーパー、コンビニエンスストア等の店舗については、ずいぶん前から期待は高かったが、なかなか期待に応えられない状況が続いている。わが国独自の生保販売専業店舗である『保険ショップ』的な発想は米国にはないようだ。
グラフ4 生命保険購入場所として許容できる場所
一方、保険料試算サイト、アマゾン、グーグル等のオンラインサイトは、現状、あまり人気がないが、デジタル化が進む昨今、今後は注目の代替的チャネルとなるかもしれない。

デジタル化の文脈から考えれば、生命保険の『オンライン販売』も、追い風を受けることができるかもしれない。ただし、アマゾン、グーグル等 デジタル化の旗手たちが独自の『オンライン販売』を創り出し、既存の『オンライン販売』を駆逐する可能性もある。要注目である。
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松岡 博司

研究・専門分野

(2017年02月14日「保険・年金フォーカス」)

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