2017年02月10日

トランプ大統領の米国とEU-統合の遠心力はますます強まるのか?

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
  1. 米国のトランプ政権発足から3週間が経った。EUにも波紋が広がっている。
     
  2. EUと米国の環大西洋貿易投資協定(TTIP)は凍結の見通しとなり、北大西洋条約機構(NATO)の軍事費のGDP2%目標に届かない国には圧力がかかる。
     
  3. 批判の矛先は「ドイツのための乗り物」であるEUと「暗黙のドイツ・マルク」ユーロにも向かう。トランプ大統領のEU懐疑は、過剰な規制への嫌悪に加え、人の移動の自由はアイデンティティーを脅かす、そしてEUとユーロによってドイツが不当な利益を享受しているという認識からなるようだ。ドイツが米国の批判を受け入れることはなさそうだが、だからといってEUとユーロを分裂に追い込んでも、米国が利益を得ることにはならないだろう。
     
  4. 米国からの外的脅威はEUの求心力を強める可能性があるが、EUに懐疑的な極右・ポピュリスト政党を勢いづけ、遠心力が強まるリスクへの警戒も怠れない。議会選挙を控えるオランダでは自由党、フランス大統領選挙ではマリーヌ・ルペン候補が世論調査トップを走る。しかし、政治体制や憲法が歯止めとなるため、オランダにおける自由党の政権参加、フランスにおけるルペン大統領の誕生イコールEU離脱のドミノとはならない。
     
  5. 3月にEU離脱手続きに進む英国のメイ政権にとってもトランプ政権との距離感は難しい。ただでさえ不透明感の強い交渉の先行きは、EUに懐疑的で、二国間交渉を重視するトランプ政権の誕生で、さらに混迷の様相を深めている。
トランプ政権の政策を巡るEUの不安
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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