2017年02月03日

トランプ相場とアベノミクス相場の相違点(為替)~金融市場の動き(2月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. (トピック) トランプ氏の大統領選勝利以降、急速な円安ドル高が進行した。選挙後に円安が進んだ別の例としては、2012年末に安倍自民党が勝利した衆院選後が挙げられる。円安ドル高の背景を見ると、両相場ともに日米金利差が拡大した点が共通するが、パターンは異なる。アベノミクス相場では金融緩和強化観測により日本の金利低下を伴う形で日米金利差が拡大したが、トランプ相場では同氏の経済対策への期待から米長期金利のみが上昇する形で金利差が拡大している。また、日本の貿易収支も大きく異なる。アベノミクス相場期には大幅な赤字であり、円安圧力となっていたが、トランプ相場(現在)は黒字化しており、円高圧力となっている。これらの結果、アベノミクス相場では「円安」の色彩が極めて強かったが、トランプ相場では、「ドル高」の色彩が目立つ。ドル高は米経済の逆風になるため、トランプ氏のドル安志向と共鳴し、ドル高牽制発言に繋がっている。今後の相場のカギは、トランプ政権による市場の期待への対応だ。振り返ってみると、安倍政権は発足以降に矢継ぎ早に市場の期待に応え、早期に大規模緩和への道筋をつけたことが持続的な円安を促した。一方、トランプ政権も政策を実行に移しているが、市場が待ち望んでいるインフラ投資・減税に関する動きはまだ見えてこない。今後、説得力のある大規模なインフラ投資・減税策を示せるか?予算権限を握る議会との調整を順調に進められるか?が注目される。市場の期待に応える大規模なインフラ投資・減税の具体像が見えてくれば、再びドル高を促すだろう。一方、議会との調整過程で難航し、大幅な規模縮小に向かえば、期待剥落に伴ってドル安が進むだろう。
     
  2. (金融市場) 為替は目先こそ本日の米雇用統計次第だが、今後ともトランプ大統領の言動に左右される地合いが続き、一進一退の展開を予想。長期金利は当面横ばい圏に。
2012年衆院選後、2016年大統領選後のドル円
■目次

1.トピック:トランプ相場とアベノミクス相場の相違点(為替)
  ・トランプ相場はドル高色が強く、ドル高牽制を誘発
  ・安倍政権はスタートダッシュで期待に応えた、トランプ政権は?
2.日銀金融政策(1月):米政策の注視を強調、円安誘導批判を牽制
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(1月)の動きと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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