2017年01月31日

【アジア・新興国】注目を集めるアジアの保険会社による海外不動産投資~中国の保険会社を中心に世界の主要プレイヤーに~

増宮 守

文字サイズ

4―中国本土の保険会社による海外不動産投資

最近では、中国本土の保険会社も、海外不動産投資を積極化している。中国本土では、規制緩和による不動産投資解禁以降の年月が浅く、依然として総資産に対する不動産の比率が低い(図表-1)。そのため、保険会社の不動産投資拡大の余地は大きく、国内に止まらず、海外でも積極的に投資機会を追求している。

実際、中国本土の保険会社による海外不動産投資の事例をみると(図表-4)、最大手の中国平安保険や中国人寿保険が揃って積極的に海外不動産投資を進めている。加えて、3番手以下の保険会社も海外不動産投資を進めており、中国本土の保険会社による海外不動産投資は、台湾や韓国に比べても裾野が広く、今後の広がりも大きいとみられる。

また、中国本土の保険会社では、2014年の中国人寿保険によるロンドンのオフィスビル、カナリーワーフタワー (7億9千5百万英ポンド) の取得(70%持分)や、2015年の中国安邦保険によるニューヨークの高級ホテル、ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク(19億5千万米ドル)の取得、さらには2016年の中国人寿保険によるニューヨーク・マンハッタンのオフィスタワー(16億5千万米ドル、RXRと共同出資)の取得等、台湾、韓国の保険会社の事例をはるかに上回る、世界的にも巨大な取得事例がみられている。

加えて、中国本土の保険会社では、子会社などを通じて海外で不動産開発に乗り出すケースもみられる。特に、中国平安保険は不動産開発に積極的で、複数の開発案件に投資している。中でも、シドニー中心部で現地のレンドリースと日本の三菱地所と共同し、超高層のオフィス商業複合施設を再開発する計画では、全体の5割を出資しており、新たなシドニーのランドマークビルの開発を主体的に手掛ける立場となっている。
図表-4  中国本土の保険会社による海外不動産投資

5―おわりに

5―おわりに

このように、不動産投資の拡大を続けるアジアの保険会社は、海外の不動産にも積極的に投資している。また、各国の保険会社の動向には特徴がみられ、特に中国本土の保険会社については、世界的にも大規模な取得事例が多く、開発案件にも積極的に取り組むなど、その動向が注目される。

不動産投資市場全体でみると、これまでアジアの投資家では、GIC(シンガポール政府投資公社)やCIC(中国投資有限責任公司)などの外貨準備の運用機関や各国の年金基金といったSWF(ソブリンウェルスファンド)が知られてきた。主にSWFの運用資産の拡大に伴い、アジアの投資家によるアジア域外での不動産投資額は、年々大きく増加してきた(図表-5)。

中国本土などのアジアの保険会社は、SWFに追随する形で投資家としての存在感を高め、世界の不動産投資市場において主要プレイヤーとしての役割を担いつつある。

日本国内では、これまでアジアの保険会社による不動産投資は本格化していない。しかし、投資に向けたリサーチは進められており、今後、日本国内でもアジアの保険会社による取得事例が増加し、主要な不動産投資家の一角を占める可能性は小さくないと考えられる。
図表-5 アジア資金によるアジア域外での不動産取得額
Xでシェアする Facebookでシェアする

増宮 守

研究・専門分野

(2017年01月31日「保険・年金フォーカス」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【【アジア・新興国】注目を集めるアジアの保険会社による海外不動産投資~中国の保険会社を中心に世界の主要プレイヤーに~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

【アジア・新興国】注目を集めるアジアの保険会社による海外不動産投資~中国の保険会社を中心に世界の主要プレイヤーに~のレポート Topへ