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長期少子化社会に潜む負のループ「赤ちゃんを知らない」子どもたち-未婚化・少子化社会データ検証:「イマジネーション力欠如」への挑戦-
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
4――おわりに
彼のあまりにも有名な言葉に
「イマジネーションの限界がわたしたちの能力の限界である」がある。
「イマジネーションできるなら、それはきっと叶うよ」といった文脈で、希望を叶える際のイマジネーション力の重要性を説くアドバイスとしてこの言葉は世界中で使われている。
拙稿、「未婚の原因は『お金が足りないから』という幻想-少子化社会データ検証:『未婚化・少子化の背景』は『お金』が一番なのか-」で示したように、実に未婚男女の9割が結婚を希望しており、その結婚を希望している未婚男女は平均2人の子どもが欲しい、という希望を持っている。
そうであるならば、そのような家庭の姿やあり方を若い人々が具体的にイマジネーション出来るようになる施策がこの国には必要なのではないだろうか。
「子どもが2人いるご家庭なんて、いっぱいあるだろう」という見解もあるだろう。
しかし、
・それが子どもたちの成長過程や未婚男女の目に留まるところにあるのか
・これから結婚を希望する世代において「女性活躍」が進み、共働き夫婦の希望が増加する8とするならば、共働き夫婦が子ども2人を育てる姿をイマジネーション出来る家庭で育った子どもたちは十分にいるのか、
と考えると、それは決して十分とはいえないだろう。
2016年10月、群馬県渋川市では市立の全中学校の家庭科授業において「赤ちゃんと触れ合う事業」プログラムの下、触れ合い授業を開始した。
授業の対象となるのは中学2年生と3年生で、この12月上旬までに約700人の生徒が100人程度の赤ちゃんとふれあったという。同市で2015年に実験的に実施された6校のテストふれあいで子どもたちから「将来子育てをしたい」という反響が寄せられたことがきっかけである。まだ頭の柔らかい子どもたちのイマジネーション力は無限ともいえる。
群馬県で広がりを見せているこのような「少子化社会がもたらすイマジネーションの壁」への果敢な挑戦が、今後全国に拡大することを期待したい。
8 「第15回出生動向基本調査」では、女性の理想のライフコースとして「再就職コース」34.6%「両立コース」32.3%である一方、専業主婦コースは18.2%となっており、年々「両立コース」がその割合を伸ばしている。
【参考文献等一覧】
国立社会保障・人口問題研究所(2016) 平成27年第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査・独身調査)
厚生労働省. 人口動態統計(確定数)
日本産科婦人科学会.2012年ARTデータブック
石動瑞代.「乳幼児期の発達の特徴」.富山県子育て情報バンク「家庭教育講座」
国立青少年教育振興機構(2016)「若者の結婚観・子育て観等に関する調査」
警察庁(2016)生活安全局生活安全企画課刑事局捜査第一課.「平成27年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等の対応状況について」
Piliavin, Jane A.; Callero, Peter L.; Evans, Dorcas E,’ Addiction to altruism? Opponent-process theory and habitual blood donation.’,Journal of Personality and Social Psychology, Vol 43(6), Dec 1982, 1200-1213.
厚生労働省(2012)「平成23年度 全国母子世帯等調査結果の概要」
西 文彦(2012 年)「シングル・マザーの最近の状況(2010 年)」総務省統計研修所資料
新居日南恵(2016)「『家族留学』の意義から考える大学生の現状と今後求められる取り組みについて」.内閣府第2回結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会 提出資料
佐藤敬子(2016)「別府大学 ライフデザイン講座の取組について」.内閣府第2回結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会 提出資料
天野馨南子(2016)「少子化社会で急増する『赤ちゃんを知らない子どもたち』~イマジネーションの限界は実現可能性の限界~子どもたちに赤ちゃんとのふれあい環境を作ることの大切さについて」. 内閣府第4回結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会 提出資料
天野馨南子(2016)「未婚の原因は『お金が足りないから』という幻想-少子化社会データ検証:『未婚化・少子化の背景』は『お金』が一番なのか-」.ニッセイ基礎研究所基礎研レポート2016年9月5日号
03-3512-1878
- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は就任順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
(2017年01月23日「基礎研レポート」)
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