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長期少子化社会に潜む負のループ「赤ちゃんを知らない」子どもたち-未婚化・少子化社会データ検証:「イマジネーション力欠如」への挑戦-
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
はじめに-少子化社会のもつ少子化トラップから抜け出すために
当然のことながら、長期にわたる低出生率社会は、30年、40年前とは全く異なる現在の日本社会を作り上げたことは想像に難くない。
そしてこの長期にわたる低出生率社会が今、さらに少子化を進行させる「少子化ループ社会」を日本にもたらそうとしている。
「少子化ループ社会」
それは他でもない、日本に住む子どもたちの成長過程に大きな影を落としている。
本稿は、長期の少子化社会が日本の子どもたちにもたらしてきた負の心の環境と、それに対するこれからの対応策について考察したものである。
1合計特殊出生率 Total Fertility Rate(TFR):
15歳から49歳の女性のそのエリアにおける人口の年齢の偏りによる影響を排除した統計上の出生率。単純な出生数/女性の数ではないため、単年度の狭い年齢層の社会的な人口流出入による増減にTFRは左右されにくい。よく記事などにみられる「昨年は○○県で女性の流入人口が増えたため、出生率が上がった(下がった)のではないか」などという表現は統計的には正しくない。
1――出生率が1.5を切る「きょうだいの赤ちゃん時代を知らない」社会
出生率が低いことについて、なぜか「女性が子どもを産まなくなった」「結婚しない人が増えた」といった結婚・出産の状況ばかりがクローズアップされてきた。これは全て大人の目線である。
しかし、少子化を「子どもの目線」から見るならば、それは「きょうだいがいない」「年の離れたきょうだいがいない」社会なのである。
日本はいま「きょうだいがいなかったり、いたとしてもきょうだいの赤ちゃん時代をしらなかったりする」子どもたちの状況が長期にわたって続いている社会となって長い国である。
ここで、一人っ子ならば「きょうだいがいない」は理解が容易であるので省略し、例えきょうだいがいても「きょうだいの赤ちゃん時代をしらなかったりする」状況についてデータで示してみたい。
女性の第1子平均出産年齢が上昇し続けているというデータを知っている人は多い。しかし、第1子以降の第2子・第3子の出産年齢の動向についてはあまり取り上げられているのを見ない。そこで、日本における1950年以降の65年間にわたる母親の出産年齢の推移を第1子から第3子まで見たものが図表2である。
この65年間の推移を見てみると、第1子と第2子の平均出産年齢の差は徐々に縮小しているとはいえ、2.5歳から1.8歳へとほぼ2歳前後で推移してきている(図表3)。
この2歳前後、という数値には女性の生物学的な問題が絡んでおり、非常に納得感のある数値である。
聖路加国際病院 女性総合診療部塩田恭子医長によれば、産後、女性の子宮が完全に出産前の形に回復するにはおよそ2年かかるということである。つまり、母親本人の自覚があるかどうかはさておき、子宮が元の状態にほぼ戻ったところで、次の子を希望する女性は出産する傾向にある、と推定される。この出産間隔を無理に縮小しようというのは、生物学的には女性の身体に負担増となる。
03-3512-1878
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