2017年01月12日

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(3)-EIOPAの報告書の概要報告-

中村 亮一

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3―措置全体の会社別のSCR比率等への影響

1|SCR比率への影響
(1)ドット分布
以下の図表は、MA、VA、TRFR、TTPの適用前後のSCR比率を会社別にドットしたものである。

斜線が適用前後の影響度を表す0%ポイント、50%ポイント、100%ポイント、200%ポイントのラインを示している。

これによれば、全ての会社が0%ポイントラインの上にあり、このことはある意味で当然のことであるが、各種措置の適用で全ての会社がSCR比率を低下させておらず、基本的には殆どの会社がSCR比率を上昇させている。

多くの会社が0%ポイントラインと50%ポイントラインの間にあることから、上記措置の適用による影響がほぼプラスの50%ポイントに収まっていることを示している。

なお、この図表からわかるように、各種措置の適用後では全ての会社のSCR比率が100%以上であるが、適用前ではいくつかの会社が100%を下回っている。さらに、3つの会社はSCR比率がマイナスで、マイナスの自己資本となっている。
図表 MA、VA、TRFR、TPPの少なくとも1つの措置を使用している会社のSCR比率に対する影響
(2)棒グラフ分布
「2016 EIOPA保険ストレステスト報告書(2016 EIOPA Insurance Stress Test Report)」によれば、ストレステストのサンプルベースで、措置の非適用によるSCR比率への影響については、措置の適用前後の会社数分布は、以下の図表の通りとなっている。

各種措置適用ベースでは、ストレステスト参加会社の平均SCR比率は196%となり、7割以上の会社が160%以上のSCR比率となっている。

SCR比率が100%を下回ったのは2社で、サンプル会社の総資産の0.02%にすぎない。
図表 SCR 比率の会社数分布(各種措置適用ベース)
一方で、各種措置非適用ベースでは、全体のSCR比率は136%に低下し、100%を下回るSCR比率となる会社の割合は、32社でサンプルの14%、総資産の26%に増加する。
図表 SCR比率の会社数分布(各種措置非適用ベース)
2|技術的準備金への影響
下記の図表は、各種措置の非適用による技術的準備金への影響を会社毎に並べたものである。

影響度は、会社毎に大きく異なっており、幅広い分布状況となっている。
図表 各種措置の非適用による技術的準備金への影響(会社毎)
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中村 亮一

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