2016年12月21日

国際競争力に資する鉄道ネットワーク~オリンピック・パラリンピックと都市 3/3

【ポスト2020、魅力ある世界都市へ 訪日客数4000万人時代への挑戦】

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7.都市基盤整備のスピード

こういったことが時間軸から言って、先ほど石原さんが「俺が生きている間にできるのか」と言っていたという話をしましたが、実はできるのです。私が50年近く東京都政を見てきた実感から言いますと、できるのだと思います。
 
先ほど都市構造論で少し出てきました。1995年に東京都は「とうきょうプラン」というものを作っております。
写真15
その中で都心の機能更新をするべきだということで、それまで副都心を育成するために都心機能を更新させない、抑制するという政策を転換しました。そうしたら、7年後に丸ビルができました。
 
そう決めたからできただけではないのですが、抑制を取ったことは間違いありません。8年後には六本木ヒルズができました。この種の再開発は結構早めに対応していただけるということです。
 
1995年のとうきょうプランで、東京都政が始まって以来初めて、羽田空港の国際化に言及いたしました。結局、それからいろいろな交渉事やすったもんだを経て、羽田の4本目の滑走路が完成し、定期路線が国際航空路線として飛び始めたのが2010年です。
 
だから、行政計画で決めてから15年で4本目の滑走路ができ、国際定期便が飛び始めたということになります。この15年を長いと見るか、短いと見るかですが、結構できるということだと思います。3環状道路については先ほど申し上げたとおりです。
 
ちなみに、この写真の左下が羽田の4本目の滑走路の多摩川にかかる部分で、多摩川の流路を妨げないために桟橋方式にしました。ニューヨークのラガーディア空港にヒントを得たものです。
 
右側の写真は、今は立体化しましたけれど、京急の本線の連続立体交差化をする前の踏切に、当時の森喜朗首相と石原知事が引っ掛かっている場面です。
写真16
このとき、私どもの設営は、プレスの皆さんには海側の踏切の海側の方でカメラを構えていただき、森首相と石原知事、その他の国会議員は、環8を陸側から海側に向かって歩いていただくと、必ず踏切に引っ掛かります。朝10時ごろの話なので、朝9時ごろにこれをやってしまうと、閉まりっ放しで全く様にならず、怒って帰ってしまうかもしれないので、適当に開く時間ということで10時過ぎにしました。
 
忘れもしない、これは西暦2001年2月1日のことです。なぜ忘れもしないかと言いますと、みぞれが降っていたのです。さらになぜ忘れないかと言いますと、その3日前まで石原知事はダボスの国際経済人会議に出席していたわけです。この2月1日の前々日、東京に帰ってまいりました。
 
私はダボスに電話しても、これでは実感が湧かないから、成田空港に着いたら車の中から知事との電話をつないでほしいと随行の秘書に頼みまして、電話で知事にお願いしました。
 
「帰国なさったばかりで恐縮ですが、あさってこういうアピールをします。京急の連続立体交差化のためです。ぜひ朝来てほしい」と申し上げました。そうしたら、皆さん想像がつくと思いますが、「何で森君が来るのに俺が行かなきゃいけないんだ」と言われました。
 
石原さんの方が先輩ですから、その種のことをよく議会でもおっしゃいましたが、そういったことを言われました。「いや、予算の前倒しです。蒲田警察署にとにかく午前10時に来てください」とお願いしました。「うーん」とか言われて、電話は切られてしまいましたが、蒲田警察署に来てくれました。
 
この写真の陸側に向かって行って、すぐ左側に蒲田警察署があります。そこに首相と知事に集合していただいて、こうやって首尾よく、当たり前ですが踏切に引っ掛かって、渡ってきた首相と知事が「こんな踏切をいつまで放っておくのだ。環8だぞ、羽田空港があるのだぞ、けしからん。早く連続立体交差化すべきだ。予算を前倒して付けろ」というふうに言っていただきました。
 
首尾よくこの年から予算が付いて、現在はご承知のとおり京急の立体化ができています。
 
これが2001年2月1日のみぞれの降る日にやったイベントなので、11年かかって京急の連続立体交差化本線、合わせて羽田空港線の連続立体交差化ができたことになります。これで箱根駅伝の選手が羽田空港線のためにここの踏切で足踏みをして、後でその分をタイムカットするという、東京都にとってみっともない話はなくなったことになります。
 
ですから、皆さんこうして見るとどうでしょうか。この種のインフラ整備はとても難しいように思われるかもしれないのですが、私の人生の経験から言うと、私たちが都庁にいた時代にずっと課題だったことは結構出来上がっているのです。
 
今言っているように簡単ではなくて、実はまだまだ中身は紆余曲折あって、一つ一つにエピソードが満載されているのですが、とにかくできているわけでございます。私たちはやはりこういったことを次の世代のためにしていくということだと思います。
 
実はロンドンもやっていまして、ロンドンはオリンピックの前にこうやって地下鉄の中でも、オリンピックゾーンは専用車両だから使わないでということをやっていて、これでしのぎました。
 
でも同時に2012年のオリンピックが始まった年に、地下鉄のクロスレールの工事を始めています。今走っている地下鉄はチューブといって、大江戸線より一回り小さい地下鉄です。1863年に開通したのでしょうがないのですが、地下鉄とはいえないというと失礼かもしれませんが、そういう代物です。
 
しかし、今度造るクロスレールは本格的なもので、自動車交通ではとても不便なロンドンを東西で結ぶ地下鉄でございます。これを今は掘っています。
 
2012年のロンドン五輪が始まったときに掘り始めたので、私はロンドン市役所の人に悪態をつきました。
 
「なぜオリンピックを始めるときに道路を掘り返し始めるの」と聞くと、彼らは「違うんだよ。オリンピックムードがあるから、この着工ができたのだ。これもオリンピックのレガシーだよ」と言っていました。私はそういう考え方がやはり必要なのかなと思います。
 
さらに言うと、シティーから見てテムズ川の向かい側にシャードが建ちました。このシャードのビルはヨーロッパで最大の高さのオフィスビルになりました。ロンドンは今まで超高層ビルなど造らなかったのです。ドックランズのみということだったわけですが、これが建ちました。
 
これもやはり計画はオリンピックのときです。「これもオリンピックのおかげか」とロンドン市役所の人に言うと、「いや、違う。今年は、この種の高い建物に必ず反対するチャールズ皇太子がとてもハッピーな状態にあったので、これが通ってしまったのだ」と言っています。
 
例の皇太子の息子さんの婚約が整ったときに、これが許可されているのです。そういう事情はあるのですが、みんな努力しているということだと思います。
 
最後に一言だけ、この話をしておきたいと思います。オリンピックはスポーツの祭典であると同時に、文化の祭典でございます。
写真17
ロンドンの場合もオリンピック開催2012年の3年前から文化イベント、エンターテインメントを全国展開いたしました。かなりオリンピックムードが盛り上がったと同時に、どちらかというと前衛アートに冷たかったイギリス国民が、とても前衛アートに親しむようになったといわれております。
 
東京も同じで、これは東京都の文化ビジョンです。東京もやはり3年前から全国展開をしようということで、既にモデルイベントが始まっております。
写真18
この後は、パネルディスカッションで議論されることになると思いますが、これはパリのサクレ・クール寺院、モンマルトルの丘です。
 
あるいはロンドンだったらピカデリーサーカスのような盛り場では、必ず人々が座って楽しむということがあります。こうやって座って楽しむような世界一の盛り場のような場所が、東京あるいは日本にどれだけあるかと言うと、まだまだ増やしていかなければならないということになるのだと思います。
 
この写真を見て、東京だと思う人があまりいないのですが、東京の都心の街並みも大体こういった感じになってきて、水準は相当に高くなったと思います。
 
これは文化イベントを行うための政府の計画ですけれども、東京に今まで足りなかった文化に親しむ機会を増やしていくということが、基本的にとても大切だと思います。
写真19
東京のミュージカルやコンサートなどを見るために、あるいは聞くために、ヨーロッパ人やアメリカ人が東京へ旅行に来るぐらいのことをしないと、私たちは悔しくてしょうがないのです。
 
大体ロンドンに演劇を見にいったり、ニューヨークにミュージカルを見にいったりするために私たちは大金を使っているわけですが、それを彼らにも東京でさせて初めて、東京でも文化や観光が根付いたといえるのではないかと思います。
 
以上、大変に雑ぱくなお話をしましたが、本番はこの後のパネルディスカッションで専門家の皆さんからしていただけると思いますので、それをご期待いただきたいと思います。私の話を聞いていただいて、どうもありがとうございました。
 
次回掲載:1/5予定
【パネルディスカッション】
日本のインバウンド~魅力ある世界都市へのプロセスと課題1/4
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(2016年12月21日「その他レポート」)

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