2016年12月19日

貿易統計16年11月~持ち直しの動きが見られる輸出

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出数量が高い伸びに

財務省が12月19日に公表した貿易統計によると、16年11月の貿易収支は1,525億円と3ヵ月連続の黒字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:2,274億円、当社予想は1,319億円)は下回った。輸出(10月:前年比▲10.3%→11月:同▲0.4%)、輸入(10月:同▲16.5%→11月:同▲8.8%)ともに前月から減少幅が縮小したが、輸出数量が高い伸びとなり輸出の減少幅がより大きく縮小したため、貿易収支は前年に比べ5,400億円の大幅改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比7.4%(10月:同▲1.4%)、輸出価格が前年比▲7.3%(10月:同▲9.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比3.6%(10月:同▲2.4%)、輸入価格が前年比▲12.0%(10月:同▲14.4%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移/輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は5,361億円の黒字となり、10月の4,668億円から黒字幅が拡大した。輸出が前月比4.3%と4ヵ月連続で増加し、輸入の伸び(前月比3.4%)を上回った。

2.持ち直しの動きが見られる輸出

11月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比8.8%(10月:同▲2.0%)、EU向けが前年比8.2%(10月:同1.7%)、アジア向けが前年比8.6%(10月:同▲0.9%)といずれの地域向けも高い伸びとなった。

季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比6.2%(10月:同▲5.1%)、EU向けが前月比3.9%(10月:同▲4.1%)、アジア向けが前月比5.3%(10月:同▲1.7%)、全体では前月比2.6%(10月:同▲0.3%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 11月の輸出数量指数(季節調整値)が高い伸びとなったのは10月に大きく落ち込んだ反動の面もあるが、10,11月の平均を7-9月期と比較すると、米国向けが2.2%、EU向けが0.1%、アジア向けが1.5%高い水準にある。景気が堅調に推移する米国向けを中心に輸出は持ち直しの動きが見られる。

ただし、前年に比べた輸出数量の高い伸びは、今年の11月が昨年よりも平日の数が1日多く通関日数が多かったことが影響している可能性があること、このところ輸出を大きく押し上げている半導体電子部品は新型スマートフォン関連需要の一巡によって今後反動が見込まれることには留意が必要だろう。

3.貿易黒字(季節調整値)は縮小へ

11月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=49.2ドル(当研究所による試算値)となり、10月の45.2ドルから上昇した。11月のドバイ原油は40ドル台半ばとなっていたが、12月に入り50ドル台に上昇している。通関ベースの原油価格は12月に40ドル台半ばまでいったん下落した後、17年1月には再び50ドル台まで上昇することが見込まれる。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 ここにきて急進している円安は輸出入価格をともに押し上げるが、輸入のほうがドル建ての割合が高いため、輸入価格の上昇幅が輸出価格の上昇幅を上回るだろう。

一方、数量ベースの輸出は持ち直しの動きが見られるが、海外経済の回復が緩やかにとどまることから今後伸びが加速することは期待できない。このため、先行きの貿易収支(季節調整値)は黒字幅が縮小する可能性が高いだろう。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年12月19日「経済・金融フラッシュ」)

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