2016年12月13日

ポイントプログラムとは何か~一層の消費者保護と健全な発展に向けて

小林 雅史

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4ポイントプログラムに関する金融審議会などでの検討(2008年5月~12月)
上述の経済産業省による検討のほか、商品券・ギフト券・プリペイドカードなど前払式支払手段に関する制度整備に向け、金融政策について議論する金融審議会金融分科会第二部会の決済に関するワーキンググループにおいて、ポイントプログラムに関する検討が行われた(2008年5月~12月)。

同部会報告書においては、ポイントについては、「財・サービスの販売金額の一定割合に応じて発行されるものや、来場や利用ごとに一定額が発行されるものなど多種多様」で、「ポイントを利用して、景品への交換、商品の割引購入、前払式支払手段や現金・預金債権の取得など、ポイントの利用によって受けられる財・サービスも多種多様」と位置づけられている。

また、ポイントに関する会計処理については、「顧客が購入した財・サービスに付随して将来的に費用が生じ得るものとして将来の使用に備えた引当金を積む処理のほか、国際会計基準では、顧客が購入した財・サービスとは別に、財・サービスの販売であるが将来に提供するものとして前受金の処理が行われることとされる」と指摘されている。

ポイントへの新たな規制導入については、「前払式手段とは異なり、消費者から対価を得ず、基本的に、景品・おまけとして無償で発行されているとともに、財・サービスの利用範囲が限定されており、法規制を設ける必要はなく、消費者保護に向けた事業者の自主的な取り組みで対応することで問題はない」との意見と、「得られるポイントを考慮して財・サービスの購入を判断していること、ポイントの発行が多額になっていること、ポイントでの支払やポイント交換の対象が拡がっていることなどから、何らかの消費者保護が必要であり、事業者の自主的な取組みでは不十分である」との意見が併記されたが、資金決済法などによる法規制は見送られた20

同部会報告書において、ポイントの発行に当たって消費者が対価を負担している場合には、前払式支払手段としての取扱いを受ける(資金決済法で、消費者への情報提供や供託金などを義務付け)とされ、この点、2016年7月、経済産業省が規制所管からの確認を経て、ポイントの発行時に消費者が対価を負担していない場合は、前払式支払手段としての取扱いを受けないとの見解を示している21
 
20 金融審議会金融分科会第二部会「資金決済に関する法整備について~イノベーションの促進と利用者保護~」(2009年1月14日)、金融庁ホームページ。
21 ニュースリリース「ポイントサービスに関する資金決済法の取扱いが明確になりました~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~」(2016年7月5日)、経済産業省ホームページ。
 

4――ポイントプログラムの課題と対応方向

4――ポイントプログラムの課題と対応方向

ポイントプログラムの発祥は1850年ごろの米国であり、スタンプカード方式によるものであった。
わが国では1928年に江崎グリコが引換証20枚と景品との交換を開始し、1989年にヨドバシカメラがポイントカードを発行したことにより広く普及したとされている22

最近は、銀行や保険など金融業界の一部にもポイントが導入され、さらに業態を超えた各ポイント間の互換性など、ポイントプログラムの進化が進み、企業に加え地方自治体などでも活用されるなど、社会的なインフラとして定着している。

こうしたポイントプラグラムについての課題は2点ある。

1点目は、消費者に対するよりわかりやすいポイントプログラムの開示ルールの設定である。

ポイントを企業側のサービスと捉えるか、消費者の権利と捉えるかという議論の帰着や、立法などを待たず、実態的な消費者保護を考える必要がある。

ポイントの有効期限は各社区々であり、ポイントの消滅は消費者の不利益に直結する。

現在、ポイント残高や消滅期限など、一定期間ごとに丁寧に開示している企業もあるが、開示の方法などは各社さまざまである。

ポイント付与や、その蓄積の方法など、ポイントプログラムの内容そのものは各社の創意工夫により、消費者にとってより魅力的なものとして切磋琢磨する一方、各業界で消費者保護に向けた、ポイントプログラムの消費者への開示、説明方法などのモデル化なども検討する必要があるのではないか。

また、ポイントプログラムの廃止や内容変更は、消費者の期待に沿わないケースが多々あり、事前の丁寧な説明が求められよう。

現状では、ポイントプログラムに関する規定そのものも、一般消費者に開示していないケースがあり、インターネットなどを通じた開示が望ましいのではないか。

また、ポイントプログラムの中には、ポイントが商品・サービスの購入直後に少量でも使用できるものもあるが、一定量のポイントを貯めない場合、使用できなかったり、別の商品・サービスとの交換率が低くなったりするケースもある。

ポイントプログラムの実態に応じた消費者への丁寧な説明や開示などが求められよう。

こうしたルールの設定は必ずしも法律による必要はないが、各業界のガイドラインなどとして一定のルールを設定することを検討してはどうか。

2点目は、ポイントプログラムについての企業の会計処理の明確化である。

ポイントプログラムについての会計処理は、前述のとおり、企業によって区々であり、こうした状況については、「ポイントプログラムの複雑化、多様化の速さに対して、会計上の対応が追いついていないのが実情である」23と指摘されている。

消費者が商品やサービスと交換できるポイントの財源を企業会計上、担保していくためにも、引当金として積み立てている金額の開示なども含め、会計処理の明確化、透明化が急務であろう。

ポイントに対する消費者の期待に応えていくために、適正なルールに基づいたポイントプログラムのさらなる発展を願って止まない。
 
22 小本恵照「進化するポイントカードとその将来性」『ニッセイ基礎研REPORT』、2007年2月、ニッセイ基礎研究所ホームページ。http://www.nli-research.co.jp/files/topics/36977_ext_18_0.pdf
23 石井理恵子、田中弘「ポイントプログラムの会計処理」前掲。
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小林 雅史

研究・専門分野

(2016年12月13日「基礎研レポート」)

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