2016年12月12日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(12月号)~3ヵ月ぶりのマイナスも回復基調は継続

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの16年10月の輸出額は前年同月比7.6%増(前月:同12.0%増)と低下した。輸出の伸び率は前月から低下したものの、主力の電話・部品を中心に堅調な伸びが続いている(図表9)。

品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同6.4%増(前月:同3.2%増)、コンピュータ・電子部品が同30.6%増(前月:同28.3%増)と、それぞれ一段と上昇した。また食品はコメ(同55.7%減)が大きく落ち込んだものの、コーヒー(同43.9%増)、水産物(同10.0増)など総じて増加した品目が多かった。一方、織物・衣類は同1.2%減(前月:同2.4%増)と減少したほか、履物は同9.3%増(前月:同9.7%増)と高水準ながらも若干鈍化した。

資本別に見ると、輸出全体の7割を占める外資系企業が同7.9%増(前月:同9.8%増)と低下し、地場企業が同0.3%減(前月:同2.3%増)と3ヵ月ぶりのマイナスとなった。

輸入額は前年同月比14.4%増と、前月の同5.8%増から上昇した。結果、貿易収支は4.4億ドルの赤字(前月から13.1億ドル減少)と、5ヵ月ぶりの赤字となった(図表10)。

なお、10月11日には韓国サムスン電子の新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の生産の打ち切りが発表されたが、10月の輸出の落ち込みは見られなかった。これは代替機種の輸出が増えたことが要因と見られる。
(図表9)ベトナム輸出の伸び率(品目別)/(図表10)ベトナムの貿易収支
シンガポールの16年10月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比11.0%減(前月:同1.1%減)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表11)。年明け以降、総じて輸出底入れの動きは続いているとみられるが、医薬品を中心に上下に振れている上に回復ペースも緩慢なものとなっている。

品目別に見ると、まず輸出(石油と再輸出除く)全体の約3割を占める電子製品は同4.9%減(前月:同2.8%減)と低下した。電子製品の内訳を見ると、PC部品(同9.9%増)とダイオード・トランジスタ(同10.1%増)が増加したものの、IC(同4.0%減)やPC(同4.8%減)、通信機器(同19.0%減)が減少した。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品は同24.3%減(前月:同9.2%増)と、2ヵ月ぶりのマイナスとなった。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同46.4%減(前月:同21.0%増)、石油化学製品が同6.0%減(前月:同2.7%減)と、それぞれ減少した。一方、その他製品は同5.0%減(前月:同6.5%減)とマイナス幅が縮小した。

総輸出額は前年同月比8.1%減(前月:同2.6%増)、総輸入額は同5.0%減(前月:同2.4%減)と、それぞれ低下した。結果、貿易収支は40.7億ドルの黒字と、前月から11.1億ドル黒字が縮小した(図表12)。
(図表11)シンガポール輸出の伸び率(品目別)/(図表12)シンガポール貿易収支
フィリピンの16年10月の輸出額は前年同月比3.7%増と、前月の同5.1%増から低下した(図表13)。輸出は前月から鈍化したものの、輸出の牽引役である電子製品を中心に2ヵ月連続でプラスを維持し、回復の動きが続いている。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同4.7%増(前月:同4.2%増)から上昇した。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同11.8%増)と半導体デバイス(同0.5%増)がそれぞれ鈍化したものの、消費者向け電気製品が大幅に増加した。その他9品目を見ると、ココナツ油(同60.4%増)と金属部品(同55.6%増)、その他鉱産物(同23.9%増)、電子機械・部品(同11.2%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同2.4%増)が増加した一方、木工品・家具(同14.7%減)と機械・輸送用機器(同9.2%減)、その他製造品(同7.8%減)、化学(同4.8%減)が減少した。

輸入額は前年同月比5.9%増と、前月の同13.5%増から低下した。結果、貿易収支は21.6億ドルの赤字と、前月から2.7億ドル赤字が拡大した(図表14)。
(図表13)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)/(図表14)フィリピンの貿易収支

(参考)仕向け地別の輸出動向

(参考)仕向け地別の輸出動向
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2016年12月12日「経済・金融フラッシュ」)

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