2016年11月29日

家計調査16年10月~消費は持ち直しつつあるが、生鮮野菜の価格高騰による悪影響には要注意

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10月の実質消費支出は減少幅が縮小

総務省が11月29日に公表した家計調査によると、16年10月の実質消費支出は前年比▲0.4%(9月:同▲2.1%)と8ヵ月連続で減少したが、減少幅は前月から縮小し、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲0.7%、当社予想は同▲1.4%)を若干上回る結果となった。前月比では▲1.0%(9月:同2.8%)の減少となった。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲0.1%(9月:同▲0.6%)、前月比▲1.5%(9月:同2.1%)となった。

実質消費支出の動きを項目別に見ると、食料は名目では前年比1.3%の増加となったが、生鮮野菜を中心に食料の物価上昇率が前年比2.3%の高い伸びとなったことから実質では前年比▲1.0%の減少となった。また、保健医療(前年比▲4.9%)、教育(同▲2.8%)など10項目中7項目が減少したが、電気代、ガス代の物価上昇率が引き続き大幅に下落していることを反映し、光熱・水道が前年比6.1%(名目では同▲0.3%)の高い伸びとなったことなどから、消費支出全体の減少は小幅にとどまった。

実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲0.5%(9月:同0.7%)と2ヵ月ぶりに低下した。同指数は16年度入り後持ち直していたが、夏場以降は天候不順の影響もあり一進一退の動きとなっている。
実質消費支出の推移/実質消費支出、消費水準指数(除く住居等)の推移

2.10月の消費関連指標は良好だが、野菜の価格高騰が懸念材料

家計調査以外の10月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の小売販売額は前年比▲0.1%(9月:同▲1.7%)と8ヵ月連続で減少したが、減少幅は前月から大きく縮小し、季節調整済・前月比では2.5%の大幅上昇となった。同指数は金額ベースとなっており、生鮮食品の価格高騰により押し上げられている面があるが、物価上昇分を考慮した実質ベースの季節調整済・販売額指数(当研究所による試算値)も前月比1.8%の上昇となった。

百貨店売上高(日本百貨店協会)は前年比▲3.9%(店舗調整後)と8ヵ月連続の減少となった。引き続き外国人観光客向けが前年比二桁の大幅減少となっていることが売上高全体を押し下げているが、8月(前年比▲6.0%)、9月(同▲5.0%)の大幅な落ち込みからは持ち直した。

また、外食産業売上高は前年比5.3%と2ヵ月連続の増加となり、9月の同1.5%から伸びを大きく高めた。客単価は前年比0.6%の低い伸びにとどまったが、客数が前年比4.6%の高い伸びとなったことが売上高を押し上げた。
小売業販売額(名目・実質)の推移/外食産業売上高の推移
16年10月の消費関連指標は、名目ベースの消費支出(売上高)が生鮮野菜の価格高騰により押し上げられている面があるが、実質ベースで見ても前月から改善を示すものが多かった。先行きの個人消費は雇用所得環境の改善を背景として回復に向かう可能性が高いだろう。

ただし、生鮮野菜の価格高騰による悪影響には引き続き注意が必要だ。10月の家計調査では生鮮野菜の購入単価(平均価格)が前年比で10%を超える伸びとなり購入数量を抑える動きが見られたが、消費全体に与える影響は限定的にとどまった。
生鮮野菜の支出金額、購入数量、平均価格 しかし、東京都区部の消費者物価指数では、生鮮野菜の上昇率が10月の前年比17.1%から11月には同38.9%へとさらに高まっており、消費の下押し圧力が高まることが懸念される。農林水産省の「青果物卸売市場調査」によれば、生鮮野菜の価格は11月下旬になってやや落ち着いているものの依然として高止まりしている。野菜の高値が長期化すれば消費への悪影響が無視できないものとなる恐れがあるだろう。
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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年11月29日「経済・金融フラッシュ」)

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