2016年11月22日

ロボット介護機器(介護ロボット)の利用意向-東京都の調査に見る現役世代の高い利用意向-

青山 正治

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はじめに

10月27日に東京都福祉保健局より「平成27年度 高齢者施策に関する都民意識調査」の結果が報告書としてまとめられ公表された。その調査は、若い世代を含めた現役世代の都民(20~65歳未満)を対象に、将来の高齢期の生活像や親の介護等に関する意識を調査し、今後の高齢者施策のための基礎資料を得るために実施された。調査項目は住まいから自身の介護等々について幅広く、その一部に「ロボット介護機器の利用意向と利用したくない理由」が加わっている。

この調査1では、特に在宅介護等を意識したロボット介護機器の4タイプ別の利用意向の調査が実施されている。ロボット介護機器とは2013年度に開始された経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」で開発支援される機器を指して使われる言葉であり、厚生労働省の事業(「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」)等とも連携し開発・導入が進められている。事業開始から4年目となり、複数の移乗介助や移動支援機、見守り支援の機器等が開発され、販売が開始されている機器もある。また、移動支援用等の機器の中には介護保険制度の福祉用具貸与の対象となっている機器もある。

2013年以降、国の政策的支援が行なわれ、ロボット介護機器(介護ロボット)の開発環境や普及環境は大きく進展し、開発された機器群が多数登場を開始している。今後に向けた現役世代の利用意向の現状はどのようになっているだろうか。本稿では冒頭の調査結果を示し、筆者による<考察と補足>を加えた。
 
1 2013年以降の調査では、2013年9月に内閣府の「介護ロボットに関する特別世論調査」が公表されている。この他にも、総務省の調査研究による「パートナーロボット」や「サービスロボット」等についてのアンケート調査の一部として「介護ロボット」についての意識調査結果が、「平成27年版 情報通信白書」及び「平成28年版 情報通信白書」に公表されている。(後者には国際比較の結果が公表されている。)
 

1――東京都の都民意識調査について

1――東京都の都民意識調査について

本章では、「平成27年度 高齢者施策に関する都民意識調査」の報告書より、「ロボット介護機器の利用意向と利用したくない理由」の章に焦点を絞り、4タイプ別の調査結果を確認してみよう。特に、「利用意向」とともに「利用したくない」とする回答者に「利用したくない理由」の設問が設けられている点は、介護や介護ロボット関係者ではない、一般の人の在宅介護向けロボット介護機器に対する理解状況を知るうえで、さらに今後の普及啓発を進める上でも価値の高い調査結果を示している。

1調査概要
このアンケート調査は、東京都が指定する地区(12地区・老人福祉圏域あたり1区市町村)に在住する20歳以上65歳未満の現役世代6,000名を抽出して実施され、有効回収数は2,602件(回収率43.8%)となっている。性別では男性が43%、女性が56%であり、年代別の割合は20代:13%、30代:19%、40代:27%、50代:27%、60代(65歳未満)が14%であり、40代と50代を併せると54%となっている。つまり、この回答者の世代は親の介護が意識される40代、50代が過半を占めている。

調査全体の内容は「第1章 回答者の属性について」に続き、「第2章 住まいの状況と希望について」「第3章 介護について」「第4章 終末期の考え方について」となっている。この「第3章」の3つある節の一つが「ロボット介護機器の利用意向と利用したくない理由」であり、以降で調査結果を示し、考察を加える。なお、以降の「60代」は全て「65歳未満」である。

なお、報告書2の調査票では4タイプ別にロボット介護機器の解説と代表的機器のイメージ(写真や図版)が例示されている。このため、回答者が参照した解説や写真・図を調査票から抜粋し、次章の4タイプ別の調査結果の各節冒頭に示す。

2|4タイプ別のロボット介護機器の利用意向の概況
初めにロボット介護機器の全4タイプの利用意向の調査結果を示す(図表-1)。
図表-1 4タイプのロボット介護機器の利用意向 集計結果は、「移乗介助用機器」の「利用したい」が69.2%、「利用したくない」が15.0%、「移動支援用機器」が「利用したい」が72.7%、「利用したくない」が12.4%となっている。さらに、「見守り用機器」の「利用したい」が77.7%、「利用したくない」が10.4%、「コミュニケーションロボット」の「利用したい」が45.7%、「利用したくない」が32.8%となっている。傾向として図表-1の上段3タイプの「利用したい」が高く、「コミュニケーションロボット」が低くなっている。

次章では、4タイプ別に「年代別の利用希望」(居住エリア別等の結果は割愛)と「利用を希望しない理由」(「利用したくない」とする回答者への設問)を示し、筆者の<考察と補足>を記す。
 
 
2 本稿で表記する「報告書」とは全て「東京都福祉保健局高齢社会対策部「平成27年度 高齢者施策に関する都民意識調査 –報告書-」(平成28年10月27日)を指し、図表などの画像・イラスト、グラフデータ等の(資料)はこの報告書名であり、以降では一部省略表記する。
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青山 正治

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