コラム
2016年11月15日

右側通行?左側通行?(2)-世界的には歩行者や自動車の通行ルールはどうなっているのか-

中村 亮一

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はじめに

前回の「研究員の眼」では、日本における「歩行者は右側通行」のルールについて考えてみた。

今回は、「世界における歩行者及び自動車の通行ルール」について見てみる。

歩行者の通行ルール

前回の「研究員の眼」で、「自動車が普及している社会においては、対面交通が広く一般的」だと述べた。これに従えば、「歩道等(歩道及び路側帯)と車道の区別の無い道路」において、自動車が右側通行の国では、歩行者は左側通行ということになるが、一方で、歩道等の中では「歩行者も右側通行」ということになる。

これに対して、そもそも、「歩道等と車道の区別の無い道路」において、対面通行というルールを採用していないケースもある。この場合、人も車も同じサイドを通行することになる。こうしたケースでは、後ろから来る自動車は、前方にいる歩行者を追い越すような場合に、注意を促すために、ホーンを鳴らすことが多くなる。

それにも関わらず、こうしたルールが採用されている理由として、狭い道路で人と車が対面した場合の対応が挙げられている。具体的には、この場合、日本のような「車は左、人は右」という意識があると、対面する自動車と歩行者は、咄嗟に、「車は左、人は右」に避難しようとすることになるが、結果的にこれは両者が同じ方向に移動し、衝突する可能性が高くなることになる1

一方で、「車も人も右」というような形になっている場合には、対面する自動車も歩行者もそれぞれから見て同じ方向(右側通行の国なら右側、左側通行の国なら左側)に避難することになる。これは、結果的に対面する両者が異なる方向に移動することになるので、衝突を避けることができるようになる。このことから、この方がより望ましいのではないか、との考え方に基づいているようである。
 
1 これについても、前回の「研究員の眼」で述べたように、「歩行者も左側通行」の意識があれば、歩行者も左に避難することで、衝突が回避できることになる。

自動車の通行ルール

よく知られているように、世界には、自動車の通行区分が、左側通行の国と右側通行の国がある。
前者は、日本の他に、英国やアイルランドや英連邦のオーストラリア、ニュージーランド、インド、南アフリカ、マレーシア、インドネシア等の国々及びタイが含まれる。後者は、米国、カナダ、メキシコ、ブラジル等の北米・中南米の国々、ドイツ、フランス、イタリア等の欧州大陸諸国に加えて、アジアの中国、韓国、台湾、ベトナム等の国々、ロシアが含まれる。なお、1つの国の中でも必ずしもルールが統一されているわけではなく、例えば、香港及びマカオは、中国返還後も、左側通行となっている。

なお、世界の主流は右側通行であり、人口比では、右側通行が左側通行のほぼ倍程度、道路の総延長距離では、さらに右側通行の比率が高くなっている。

それでは、何故これらの国々が、左側あるいは右側通行になっているのだろうか。

英国等では、何故、自動車は左側通行なのか

英国では、馬車が左側通行であったことから、自動車に引き継がれた形になっている。馬車が左側通行になっているのは、「御者(馬を操り馬車を走らせる人)が荷馬車を扱うときに長い鞭を使うが、後ろの客(や積荷や幌)に影響を与えないために、一頭立ての馬車の場合、(右利きの)御者は右側の席に座ることになり、よって対向車との関係では左側通行が望ましかった」という理由による、とされている。英国の旧植民地であった英連邦の国々は、英国に従うことになる2

日本については、前回の「研究員の眼」で述べたとおりである。英国や日本の植民地ではなかったタイが左側通行なのは、19世紀後半に欧米の制度や技術を導入して近代化を図った際、交通政策等について、主にイギリスの技術者の指導を受けたから、と言われている。
 
2 英国の旧植民地であっても、独立時等に右側通行に変更した国もある。さらには、エジプトのように、英国の支配下にあったが、それ以前にナポレオンによって支配されていたため、右側通行になっている国もある。
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