2016年11月14日

QE速報:7-9月期の実質GDPは前期比0.5%(年率2.2%)~外需主導で3四半期連続のプラス成長

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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7-9月期は前期比年率2.2%と3四半期連続のプラス成長

本日(11/14)発表された2016年7-9月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.5%(前期比年率2.2%)と3四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測10月31日:前期比0.3%、年率1.1%)。

輸出が前期比2.0%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比0.5%(年率1.8%)と成長率を大きく押し上げたことがプラス成長の主因である。

一方、公的固定資本形成が2015年度補正予算の効果一巡から前期比▲0.7%の減少、民間在庫が前期比・寄与度▲0.1%のマイナスとなったが、住宅投資が前期比2.3%の高い伸びとなったこと、天候不順による下押しにもかかわらず民間消費が前期比0.1%と小幅ながら3四半期連続で増加したこと、企業収益が悪化する中でも設備投資が前期比0.0%の横ばいで踏みとどまったことから、国内需要は前期比0.1%となった。4-6月期の同0.3%から伸び率は低下したものの、3四半期連続の増加を確保した。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.1%(うち民需0.0%、公需0.0%)、外需が0.5%であった。
 
名目GDPは前期比0.2%(前期比年率0.8%)と3四半期連続で増加したが、実質の伸びは下回った。GDPデフレーターは前期比▲0.3%(4-6月期:同▲0.0%)、前年比では▲0.1%と11四半期ぶりの低下となった。円高の影響などから国内需要デフレーターが前期比▲0.2%(4-6月期:同▲0.3%)の低下となったことに加え、輸出デフレーターの低下幅(前期比▲2.4%)が輸入デフレーターの低下幅(前期比▲1.8%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。
 
実質GDPは消費税率引き上げ後では初の3四半期連続プラス成長となった。7-9月期はデフレーターの低下で実質成長率が押し上げられていること、経済成長のほとんどが外需によるものとなっていることを割り引いてみる必要はあるが、国内需要が3四半期連続で増加したこと、ゼロ%台前半とされる潜在成長率を3四半期連続で上回ったことは一定の評価ができるだろう。
需要項目別結果
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.1%と3四半期連続で増加したが、4-6月期(同0.1%)に続き低い伸びにとどまった。雇用所得環境は改善を続けているが、8月、9月と台風上陸が相次ぎ外出が控えられたこと、9月の高温によって秋冬物衣料が不振だったことなど、7-9月期は天候要因が消費を大きく下押しした。

名目雇用者報酬は前年比2.0%となり4-6月期と伸び率は変わらなかったが、実質雇用者報酬は前年比3.0%と4-6月期の同2.7%から伸びを高めた。一人当たり名目賃金は伸び悩みが続いているが、雇用者数の高い伸びが雇用者報酬の増加に大きく寄与している。さらに、年明け以降の円高、原油安の影響で物価上昇率がマイナスとなっていることが実質ベースの雇用者報酬を押し上げており、消費を取り巻く環境は改善を続けている。
 
住宅投資は前期比2.3%と2四半期連続の増加となった。日銀のマイナス金利導入を受けた住宅ローン金利の低下、相続税対策のための貸家建設に加え、2017年4月に予定されていた消費税率引き上げを見越した駆け込み需要が住宅着工を大きく押し上げた。ただし、6月に消費税率の引き上げの延期が決まったことを受けて、7-9月期の住宅着工戸数は3四半期ぶりに前期比で減少しており、工事の進捗ベースで計上されるGDP統計の住宅投資は10-12月期以降、増勢基調が一服する可能性が高い。
 
設備投資は前期比0.0%の横ばいとなった。企業の投資姿勢は依然として慎重だが、足もとの企業収益の悪化を考えれば一定の底堅さを維持しているとの評価もできるだろう。
 
民間在庫は前期比・寄与度▲0.1%と2四半期ぶりのマイナスとなった。ただし、在庫品増加額は1.1兆円のプラスとなっており、GDP統計上は在庫の積み上がりが続いていることを意味している。特に、流通在庫の高止まり(4-6月期:1.3兆円、7-9月期:0.8兆円)が目立っており、消費の弱さを背景とした在庫調整圧力は残存している。
 
公的需要は、政府消費が前期比0.4%と2四半期ぶりに増加したが、公的固定資本形成が2015年度補正予算の効果一巡から前期比▲0.7%と3四半期ぶりに減少した。ただし、公共事業の先行指標である公共工事請負金額は2016年1-3月期に前年比1.2%と7四半期ぶりの増加となった後、4-6月期が同4.0%、7-9月期が同6.8%と伸びを高めている。また、10/11に成立した2016年度第2次補正予算の効果が年度末にかけて顕在化することが見込まれるため、先行きの公的固定資本形成は増加傾向が続く可能性が高い。
 
外需寄与度は前期比0.5%と2四半期ぶりプラスとなった。財貨・サービスの輸出が前期比2.0%の高い伸びとなる一方、国内需要の低迷を反映し財貨・サービスの輸入が前期比▲0.6%と減少したため、外需が成長率を大きく押し上げる形となった。
(10-12月期以降は内需主導の成長へ)
7-9月期は輸出が前期比2.0%の高い伸びとなったことがプラス成長をもたらしたが、4-6月期には同▲1.5%と落ち込んでいたこと、輸出の押し上げに寄与した新型スマートフォン向け部品の好調が一時的に終わる可能性が高いことを考慮すれば、基調としては横ばい圏の動きが続いていると判断される。海外経済の減速が続く中、2016年初からの大幅な円高による下押し圧力が残るため、10-12月期以降は輸出が景気の牽引役となることは期待できない。

一方、7-9月期の民間消費は弱めの動きとなったが、台風の相次ぐ上陸など天候要因で押し下げられた面も大きく、雇用所得環境の改善を背景とした消費の回復基調は維持されている。足もとでは、夏場の天候不順を受けた生鮮野菜の価格高騰という新たな悪材料が浮上しているが、一時的な下押し要因がなくなれば、消費は回復基調に戻るだろう。また、7-9月期は低調に終わった公的固定資本形成は2016年度補正予算による押し上げもあり先行きは増勢ペースを強める可能性が高い。2016年度後半は国内需要主導のプラス成長になると予想する。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2016年11月14日「Weekly エコノミスト・レター」)

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