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- 貸家着工にバブルの懸念?-住宅投資関数で説明できない好調さ
2016年11月11日
4――先行きは供給過剰の懸念が浮上
住宅市場は緩和的な金融環境に支えられ、消費増税後の落ち込みから緩やかな回復が続いている。図表2・3のとおり、持家の着工戸数は前回の消費増税に対する駆け込み需要の反動の影響から推計値を大きく下回る状況が続いていたものの、駆け込み需要の反動の影響が和らぎつつあるほか、2017年4月に予定されていた消費増税を見込んだ駆け込み需要が一部発生したこともあり、今年に入ってから持ち直しの動きがみられる。予定されていた消費増税を見込んだ駆け込み需要の反動の影響が一定程度生じる可能性もあるが、その影響は一時的にとどまり持家は引き続き緩やかに持ち直すことが予想される。
一方、貸家については駆け込み需要の規模とその反動が小さかったこと、相続税改正に伴う節税需要の効果が大きかったことなどから、消費増税後も推計値を上回る水準が続き持家に比べ堅調に推移している。先行きについても、高齢化の進展や団塊世代の加齢を背景とした被相続人数の増加により節税需要は高まっていくものと考えられ、貸家の着工戸数は堅調に推移することが予想される(図表13)。
しかしながら、懸念材料もみられる。一つが空室の状況である。空室率インデックス(図表14)の推移をみると、地域によってばらつきもみられるが、東京都を除く地域では今年に入り上昇基調が明確となっている。こうした実需を伴わない着工の急増は、相続税増税に伴う節税需要の高まりによって押し上げられている面が大きく、実需を伴った結果とは言い難い。いずれ調整局面を迎えることは避けられないだろう。
一方、貸家については駆け込み需要の規模とその反動が小さかったこと、相続税改正に伴う節税需要の効果が大きかったことなどから、消費増税後も推計値を上回る水準が続き持家に比べ堅調に推移している。先行きについても、高齢化の進展や団塊世代の加齢を背景とした被相続人数の増加により節税需要は高まっていくものと考えられ、貸家の着工戸数は堅調に推移することが予想される(図表13)。
しかしながら、懸念材料もみられる。一つが空室の状況である。空室率インデックス(図表14)の推移をみると、地域によってばらつきもみられるが、東京都を除く地域では今年に入り上昇基調が明確となっている。こうした実需を伴わない着工の急増は、相続税増税に伴う節税需要の高まりによって押し上げられている面が大きく、実需を伴った結果とは言い難い。いずれ調整局面を迎えることは避けられないだろう。
また、中期的には人口動態が住宅着工に与える影響も懸念される。図表15のとおり、年齢別に世帯の持家・借家比率をみると、民営借家に住む比率は25歳未満では世帯数の88%(持家:3%)だが、35~39歳で持家とほぼ同率の45%(持家:46%)となり、65~69歳では14%と年齢層が高くなるにつれ借家の比率が低下する傾向にある。すなわち、貸家(民営借家)の需要は39歳以下の世帯数規模の影響を受けやすいことを意味する。
人口問題研究所の人口予測によると、2016年~20年の25~39歳以下の人口は3,009万人(5年平均)と、2011年~15年の3,327万人(5年平均)に比べ▲320万人減少すると予想されている(図表16)。とりわけ、2011年から2020年にかけては団塊ジュニア世代が40歳代へ移行するため、30~39歳が大幅に減少している。これにより持家の需要が高まる反面、賃貸住宅の需要が減少6することが見込まれる。このように、人口動態の観点からも中長期的には貸家の着工戸数が高水準を維持することは困難と言える。
以上から、先行きの住宅着工戸数を見通すと、引き続き緩和的な金融環境や節税需要の高まりが支えとなることが予想される。ただし、空室率の上昇にみられるような実需を伴わない貸家の着工は高水準を維持することが困難であり、いずれ調整を余儀なくされるだろう。また、中長期的には高齢化の進展といった人口動態の変化が住宅需要の変化をもたらすことも予想される。住宅着工の先行きを展望する上で、こうした構造的な変化はリスク要因として認識しておくべきだろう。
人口問題研究所の人口予測によると、2016年~20年の25~39歳以下の人口は3,009万人(5年平均)と、2011年~15年の3,327万人(5年平均)に比べ▲320万人減少すると予想されている(図表16)。とりわけ、2011年から2020年にかけては団塊ジュニア世代が40歳代へ移行するため、30~39歳が大幅に減少している。これにより持家の需要が高まる反面、賃貸住宅の需要が減少6することが見込まれる。このように、人口動態の観点からも中長期的には貸家の着工戸数が高水準を維持することは困難と言える。
以上から、先行きの住宅着工戸数を見通すと、引き続き緩和的な金融環境や節税需要の高まりが支えとなることが予想される。ただし、空室率の上昇にみられるような実需を伴わない貸家の着工は高水準を維持することが困難であり、いずれ調整を余儀なくされるだろう。また、中長期的には高齢化の進展といった人口動態の変化が住宅需要の変化をもたらすことも予想される。住宅着工の先行きを展望する上で、こうした構造的な変化はリスク要因として認識しておくべきだろう。
6 総務省「住宅・土地統計調査」によると、世帯主40歳未満の借家比率は直近10年間でほぼ一定であり、先行きも変化がないことを想定
<参考文献>
内閣府(2015)「平成27年度 年次経済財政報告」
鈴木勇紀、佐藤鍛、八木智美(2015)「このところの住宅取得環境について」マンスリー・トピックスNo.042 内閣府
星野卓也(2016)「住宅着工戸数の見通し(2016・17年度)」第一生命経済研究所
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