2016年11月11日

企業物価指数(2016年10月)~緩やかな持ち直しが続いているが、先行きは為替や原油の動向に注意が必要

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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1.国内企業物価は前年比▲2.7%と下落幅を縮小

11月11日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2016年10月の国内企業物価は前年比▲2.7%(9月:同▲3.2%)と下落率は前月から0.5ポイント縮小したものの、事前の市場予想(QUICK集計:同▲2.6%)を下回った。前月比では▲0.1%(9月:同0.0%)となり、夏季電力料金調整後では0.1%と2ヵ月ぶりにプラスとなった。

国内企業物価注1の前年比寄与度をみると、機械類(9月:前年比▲0.2%→10月:同▲0.3%)、その他(9月:前年比▲0.0%→10月:同▲0.1%)のマイナス寄与が拡大する一方で、為替・海外市況連動型(9月:前年比▲1.1%→10月:同▲0.7%)、素材(その他)(9月:前年比▲0.8%→10月:同▲0.6%)のマイナス寄与が前月から縮小したため、国内企業物価は前年比で下げ幅を縮小した。なお、電力・都市ガス・水道(9月:前年比▲0.7%→10月:同▲0.7%)は前月と変わらなかった。

為替・海外市況連動型は、石油・石炭製品が上昇したことから、前年比で下落幅を縮小し国内企業物価を押し上げた。素材(その他)は、繊維製品の上昇を反映して前月から幾分下げ幅を縮小した。一方、その他は、豆類や肉類などを中心に農林水産物の価格が低下したことから、前年比で下落幅を拡大し国内企業物価を押し下げた。なお、電力・都市ガス・水道は、足もとの原油価格の上昇が既往の原油価格やLNGの低下を反映した燃料調整の影響を相殺する格好となった。力強さはみられないものの、国際商品市況が持ち直していることや為替・海外市況連動型の下押し圧力が弱まるなか、国内企業物価は前年比マイナス幅を縮小させている。
国内企業物価指数の要因分解/国内企業物価指数の上昇・下落品目数
国内企業物価指数の調査対象品目814品目のうち、前年に比べ上昇したのは210品目(9月:217品目)、下落は519品目(9月:519品目)となった。下落品目と上昇品目の差は309品目で9月の302品目から若干拡大しており、品目数でみた価格の下落傾向が継続している。
 
 
注1  1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
   2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
   3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
   4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属 
   5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物

2.輸入物価は国際商品市況の改善で下落幅縮小

10月の輸入物価は、契約通貨ベース(9月:前年比▲6.9%→10月:同▲4.7%)、円ベース(9月:前年比▲17.6%→10月:同▲14.4%)ともに前月から下落幅を縮小した。

輸入物価(円ベース)注2の前年比寄与度をみると、石油・石炭・天然ガス(9月:前年比▲7.7%→10月:同▲5.6%)、金属・同製品(9月:前年比▲1.3%→10月:同▲1.2%)、化学製品(9月:前年比▲1.1%→10月:同▲0.9%)、食料品・飼料(9月:前年比▲1.3%→10月:同▲1.2%)、機械器具(9月:前年比▲4.0%→10月:同▲3.6%)、その他(9月:前年比▲2.2%→10月:同▲2.0%)のいずれもマイナス寄与が縮小したことが、輸入物価(円ベース)の下げ幅を縮小させた。

石油・石炭・液化天然ガスは、円ベースで前年比▲11.0%と前月(同▲17.7%)からマイナス幅を大きく縮小した。契約通貨ベースで石油製品(9月:前年比▲21.9%→10月:同▲11.8%)や石炭(9月:前年比▲7.2%→10月:同29.4%)が持ち直したこと加え、後述のとおり円高の進行が一巡したことが影響したとみられる。

金属・同製品は、鉄鉱石や貴金属地金の下げ止まりなどから、契約通貨ベース(9月:前年比▲0.6%→10月:同0.0%)では2014年8月以来初めてマイナス圏を脱した。
輸入物価指数変化率の要因分解(円ベース)/輸入物価(石油・石炭・天然ガス)の要因分解(円ベース)
輸入物価指数の変動要因 輸入物価(円ベース)の変化率を為替要因と契約通貨ベース要因に分解してみると、契約通貨ベース要因による物価下落圧力は弱まるなかで、為替要因による物価下落圧力は16年8月をピークに後退しつつあり、輸入物価(円ベース)の下落幅は縮小している。

10月の為替レート(月中平均)は、1ドル=103.8円(9月:102.0円)と前年に比べ13.5%(9月:15.1%)の円高水準となった。その後米国の大統領選挙の結果を受けて、足もとでは106円後半まで急速に円安が進行している。もっとも、11月の為替レート(月中平均)は1ドル=104円程度と前年に比べ15%程度の円高水準にある。原油価格など国際商品市況の持ち直しによって輸入物価の下落圧力は緩和されているが、円高による下押し圧力が続くことから、下落幅の縮小は緩やかなものとなるだろう。
 
 
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
   2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品

3.最終財への下押し圧力は和らぎつつある

10月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲13.7%(9月:同▲18.3%)、中間材が前年比▲5.3%(9月:同▲6.4%)、最終財が前年比▲3.1%(9月:同▲3.5%)となった。  

円高による物価下落圧力が続くなか、国際商品市況の持ち直しを受けて素原材料は下落幅を縮小しており、最終財への下押し圧力は和らぎつつある。先行きは円高の影響が一巡することが見込まれることから、最終財は緩やかながらも下落幅を縮小することが予想される。円高の影響一巡に伴い消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い最終消費財は年末にかけてマイナスが続いた後、年度末までにプラスに転じるとみている。
国内需要財の要因分解/最終財と消費者物価

4.先行きも国内企業物価の持ち直しは緩慢

先行きは、既往の原油安の影響が一巡することで、電力・都市ガス・水道は前年比で下落幅を縮小することが見込まれる。また、台風など天候不順による農林水産物の上昇も国内企業物価の押し上げ要因となるだろう。もっとも、国際商品市況を受けて輸入物価の下落幅は縮小しているが、過去の物価下落の影響が時間的ラグを伴い川下へ波及することが見込まれることから、国内企業物価の持ち直しは緩慢なものにとどまると予想される。他方、足もとではトランプ大統領の政策を巡り、金融市場の緊張感は高まっている。当面為替や原油価格に与える影響を注意する必要があるだろう。
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2016年11月11日「経済・金融フラッシュ」)

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