2016年11月02日

最近の人民元と今後の展開(2016年11月号)

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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  • 10月の人民元相場(対米ドル)は基準値・市場実勢ともに下落する展開となった。中国では景気の小康状態が継続する一方、米国では景気の緩やかな拡大が継続したことから、元安・ドル高の流れとなった。なお、米大統領選が翌月に迫る中、クリントン候補が優勢になるとドル高へ、トランプ候補が巻き返すとドル安へと、不安定な値動きも見られた。
     
  • 今後の人民元は引き続き年末にかけて下落する展開を予想する。また、米大統領選次第では波乱の恐れもあるため、想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元と広めに設定しておきたい。

[ 10月の動き ]

10月の人民元相場(対米ドル)は基準値・市場実勢ともに下落する展開となった。中国では景気の小康状態が継続、7-9月期実質成長率は3四半期連続で前年同期比6.7%増となった。一方、米国では景気の緩やかな拡大が継続、7-9月期実質成長率(季節調整済)は前期比年率2.9%増と市場予想を上回り、元安・ドル高の流れとなった。なお、米大統領選が翌月に迫る中、クリントン候補が優勢になるとドル高へ、トランプ候補が巻き返すとドル安へと、不安定な値動きも見られた。

市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)の当月高値は1米ドル=6.7101元(10/10)、当月安値は同6.7881元(10/27)と10月は下落基調だったものの、月末には小緩み同6.7781元と前月末比1.5%の元安・ドル高で取引を終えた(図表-1)。他方、基準値は市場実勢とほぼ同様の値動きとなり、当月高値は1米ドル=6.7008元(10/10)、当月安値は同6.7858元(10/28)で、10月末は同6.7641元と前月末比1.3%の元安・ドル高となった。なお、10月は日本円が米ドルに対して前月末比3.6%の円安・ドル高となったため、人民元の対日本円レートは前月末比2.1%の元高・円安となる100日本円=6.4522元(1元=15.5円)となった(図表-2)。
(図表-1)人民元レート(対米ドル、スポットオファー)/(図表-2)最近の人民元レート(対日本円)
一方、世界通貨の動きを見ると、主要通貨ではユーロが米ドルに対して前月末比2.5%下落、日本円も同3.6%下落と、米ドル高の流れとなった。また、新興国通貨では、ブラジル(レアル)が堅調な原油価格や新政権に対する信認の高まりを背景に上昇したものの、アジアでは韓国(ウォン)が同3.7%下落、タイ(バーツ)も同1.0%下落するなど軟調な通貨が多かった(図表-3)。

また、今年2月以降、中国人民銀行はバスケット構成通貨に対する安定を重視したコントロールを実施、構成通貨の中で米国に次いでシェアの大きい欧州のユーロに対する連動性を強めている。人民元の変動性(ボラティリティ)は依然として相対的に小さいものの、上下変動のタイミングはユーロの動きと一致することが多くなってきた。10月に関してもその傾向が続いた(図表-4)。
(図表-3)10月の主要新興国通貨の変化率(対米ドル、前月末比、WM/Reuters)/(図表-4)人民元とユーロ(対米ドル)

[ 今後の展開 ]

(図表-5)製造業と非製造業のPMI 今後の人民元(市場実勢)は引き続き年末にかけて下落する展開を予想する。また、米大統領選次第では波乱の恐れもあるため、想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元と広めに設定しておきたい。

米国では、緩やかながらも景気拡大が持続しており、12月の利上げを想定している。一方、中国では、1日に公表された10月製造業PMIが51.2%と前月を0.8ポイント上回るとともに、非製造業PMI(商務活動指数)も前月を0.3ポイント上回ったことから、14日に発表される需要面の指標も改善する可能性が高いだろう(図表-5)。しかし、CPI上昇率は政府見通しを下回り利上げに動く可能性は低い。従って、米中金利差は縮小方向となり、人民元は売られやすいだろう。

なお、11月8日の米大統領選の結果次第では波乱の展開になる恐れもある。クリントン候補が当選すれば、12月の米利上げを織り込みに行く展開となるだろう。但し、トランプ候補が当選した場合は、新政権下の財政金融運営に対する不透明感が高まり、利上げを見送る可能性が浮上しかねない。選挙を直前に控えた今週はポジション調整の動きが主流になると見ている。

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2016年11月02日「経済・金融フラッシュ」)

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