2016年11月01日

図表でみる中国経済(住宅市場編)~住宅バブルの現状と注目点

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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■要旨

本稿は、中国経済をこれから学ぼうとお考えの方々を対象に、新聞記事やレポートでは通常前提として省略されることが多い基礎的な経済データを、図表を用いて分かり易く解説し、理解を深めていただくことを趣旨としている。今回はその第十回目として、「中国の住宅市場」を取り上げ、最近の住宅価格の値動き、住宅バブルの現状、今後の注目点を各種の図表を用いて解説している。中国経済に関する新聞記事やレポートを読む上で、その一助となれば幸いである。

■目次

1――最高値を更新した住宅価格
2――バブルの深刻度(住宅価格÷所得の倍率)
3――今後の注目点

 

1――最高値を更新した住宅価格

1――最高値を更新した住宅価格

中国の住宅バブルが崩壊するのではないかとの懸念が高まっている。住宅バブルが崩壊すれば、最高値圏で建設された住宅は含み損を抱えることになり、不動産デベロッパーは値引き販売を余儀なくされて経営は苦しくなる。資金を融通してきた銀行は、過剰生産設備を抱える製造業で不良債権が増加しつつある中、さらに不良債権の火種が増えることになる。また、住宅ローンを借りてようやく高価な住居を手に入れた一般庶民も、ローン返済に追われて消費にも悪影響が及びかねない。

ここもとの住宅価格の値動きを見るために、中国国家統計局が公表したデータを元に、当研究所で2010年を基準(=100)とした新築分譲住宅販売価格指数(除く保障性住宅)を計算してみた(図表-1)。これを見ると、住宅価格は2015年4月を直近底値に17ヵ月連続で上昇、前回高値(2014年4月)を3.9%上回り、ここ3ヵ月連続で最高値を更新した。また、都市別に見るとバラツキが大きい。70都市中最高の深セン市(広東省)では前回高値(2014年4月)を8割も上回るレベルに上昇した一方、最低の温州市(浙江省)では前回高値(2011年8月)を2割も下回るレベルで低迷している(図表-2)。
(図表-1)新築分譲住宅価格(除く保障性住宅、70都市平均)/(図表-2)新築商品住宅価格(除く保障性住宅)の都市別動向

2――バブルの深刻度(住宅価格÷所得の倍率)

2――バブルの深刻度(住宅価格÷所得の倍率)

それでは、中国の住宅バブルはどれほど深刻なのだろうか。一般庶民が何年分の所得で住宅を購入できるのかを見るため、中国国家統計局の公表データを元に当研究所で試算してみた。2015年の1世帯あたり所得は89,942元、1世帯が暮らすのに適した住宅価格は604,935元となり、一般庶民が住宅を購入するには6.7年分の所得にあたる資金が必要という計算結果となった1。国際的には、住宅価格÷所得の倍率は4~6倍 が合理的水準とされており、中国は1~4割の下落余地があると見られる。

一方、ここ数年、住宅価格が上昇するとともに所得も上昇、所得の上昇率が上回ったため住宅価格÷所得の倍率が緩やかながら低下傾向にある(図表-3)。しかし、地区別に見ると住宅価格に格差があるだけでなく所得にも格差がある。そこで、地区別に前述の試算したところ北京市など5地区では10倍を超えていた。ここもと住宅価格が急騰していることを勘案すれば、北京市では住宅価格÷所得の倍率が16倍前後まで上昇したものと見られる。これは日本で住宅バブルがピークを付けた1990年の東京都区部の倍率とほぼ一致している。なお、内陸部では5倍を下回る地区も5つある(図表-4)。
(図表-3)住宅価格とその所得倍率の推移/(図表-4)地区別の住宅価格/所得倍率(2014年)
 
1 計算方法の詳細については、「中国の住宅バブルは崩壊し始めたのか?」 ニッセイ基礎研レター2014-07-15をご参照ください。
 

3――今後の注目点

3――今後の注目点

(図表-5)住宅価格と主な不動産規制の流れ 最近の住宅価格上昇を受けて中国政府は住宅バブル退治に乗り出した。国慶節連休前後には多くの地方政府が住宅購入規制を強化、中国人民銀行も住宅ローン管理の強化を銀行に要請した。今後はその効果と追加対策に注目したい。過去の住宅価格と不動産規制の流れを踏まえると2、直ぐに急落する可能性は高くない(図表-5)。但し、追加対策として利上げがあれば急落する可能性も否定しきれない。また、住宅価格が下落に転じた場合、2014年の下落時と比べて利下げ余地が少なく、歯止めを掛ける手段が乏しい点も踏まえておきたい。
 
2 不動産規制の2012年までの経緯については、「不動産規制強化に揺れる中国」 Weeklyエコノミストレター2013-02-22をご参照ください。

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2016年11月01日「基礎研レター」)

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