2016年11月01日

【9月米個人所得・消費支出】個人所得は予想比下振れも、個人消費は予想を上回る伸び

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人消費は名目、実質ともに前月、予想を上回る

10月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は9月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.3%(前月:+0.2%)となり前月から伸びが加速したものの、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%は下回った。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.5%(前月改定値:▲0.1%)と前月改定値を上回ったほか、市場予想(+0.4%)も上回った(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.3%(前月改定値:▲0.2%)と前月改定値、市場予想(+0.2%)ともに上回った(図表5)。貯蓄率1は5.7%(前月改定値:5.8%)と前月から低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2(前月改定値:+0.2%)と前月改定値、市場予想(+0.2%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.2%)と前月から伸びが鈍化、市場予想(+0.1%)には一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.2%(前月:+1.0%)、コア指数が+1.7%(前月:+1.7%)となり、コア指数は前月に一致したものの、総合指数は前月から伸びが加速した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費は16年6月以来の伸び

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人消費(前月比)は、8月が15年1月以来となるマイナスに転じるなど、7月、8月と冴えない状況となっていたが、9月が16年6月以来の伸びに加速したことで、消費の持ち直しが確認された(図表1)。

また、貯蓄率も3ヵ月ぶりに低下したことから、所得対比でみた消費も回復していることが確認できた。

もっとも、7-9月期の個人消費(3ヶ月移動平均、3ヶ月前比)は、+3.6%(4-6月期:+6.4%)と前期から大幅に鈍化、所得の伸び(+3.9%)も下回っており、7-9月期の消費はやや期待外れに終わったと言える。

物価(前年同月比)は、コア指数が安定する一方、エネルギー価格の持ち直しもあり総合指数が7月以降、2ヵ月連続で上昇しており、物価上昇圧力には緩やかながら高まりがみられる。もっとも、総合指数、コア指数ともにFRBの物価目標(2%)を下回る状況が持続している。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが加速

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.3%(前月:+0.1%)と16年3月(前月比横這い)以来の低調な伸びとなった前月から伸びが加速した。労働需給の改善が持続しているため、今後も賃金・給与の増加基調は続こう。一方、利息・配当収入は+0.2%(前月:+0.4%)とこちらは前月から伸びが鈍化した(図表2)。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.3%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した一方、価格変動の影響を除いた実質ベースは前月比でほぼ横這い(前月:横這い)と2ヵ月連続で横這いの水準に留まった(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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