2016年10月31日

【7-9月期米GDP】前期比年率+2.9%、在庫投資と純輸出が成長を押上げ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 (民間投資)戸建ての落ち込みから住宅投資が2期連続のマイナス
7-9月期の民間設備投資の内訳をみると、設備機器投資が前期比年率▲2.7%(前期:▲2.9%)と4 期連続でマイナスとなった一方、知的財産投資が+4.0%(前期:+9.0%)とプラスの伸びを維持したほか、建設投資が+5.4%(前期:▲2.1%)と前期からプラスに転じた(図表5)。

最後に、住宅投資は2期連続でマイナス成長となったが、内訳をみると集合住宅は+8.5%(前期:+2.7%)とプラスとなったものの、戸建てが▲14.5%(前期:▲17.1%)と前期に続き2桁の落ち込みとなったことが大きい。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)国防関連支出が増加
政府支出は前期からプラスに転じたが、内訳をみると、地方政府支出が▲0.7%(前期:▲2.5%)と2期連続でマイナスとなったものの、連邦政府支出が+2.5%(前期:▲0.4%)とプラスに転じたことが寄与した(図表6)。

とくに、連邦政府支出では、非国防支出が+3.0%(前期:+3.8%)と前期から伸びが鈍化したものの、国防関連支出が+2.1%(前期:▲3.2%)と前期からプラスに転じて連邦政府支出を押上げた。
(貿易)大豆輸出の特殊要因で輸出が大幅に増加
 7-9月期の輸出入の内訳をみると、輸入が前期比年率+2.3%(前期:+0.2%)と伸びが加速する一方、輸出が+10.0%(前期:+1.8%)と13年10-12月期の+11.8%に次ぐ伸びとなり、当期は主に輸出の伸びが純輸出を押上げたと言える(図表7、8)。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
輸出を仔細にみると、サービス輸出が+2.1%(前期:+1.9%)と前期並みの伸びとなる一方、財輸出が+14.5%(前期:+1.7%)と前期から大幅な伸びとなった(図表7)。これは、ブラジルやアルゼンチンの不作によって米国産大豆の需要が高まったことで大豆の輸出が伸びた結果、食料・飲料が+213.0%(前期:+21.1%)と異常な伸びとなったことが大きく、来期はその反動に注意が必要だ。

一方、輸入は財輸入+0.9%(前期:横這い)、サービス輸入+8.8%(前期:+1.1%)ともに前期から伸びが加速した(図表8)。とくにサービス輸入の伸びが顕著に加速しているが、これは旅行サービス+13.5%(前期:+1.2%)や、特許使用料等が+62.1%(前期:▲6.2%)の伸びが加速したことが大きい。
(物価・名目値)物価上昇圧力は抑制された状況が持続
7-9月期のGDP価格指数は、前期比年率+1.5%(前期:+2.3%)と、市場予想(同+1.4%)は上回ったものの、前期から低下した。もっとも、当期は実質GDP成長率が大幅に上昇した結果、名目GDP成長率は+4.4%(前期:同+3.7%)と、前期から伸びが加速した(図表9)。

FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+1.4%、前年同期比+1.0%(前期:+2.0%、+1.0%)となった(図表10)。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は前期比年率+1.7%、前年同期比+1.7%(前期:+1.8%、+1.6%)となった。PCE価格指数(前年同期比)はエネルギー価格の持ち直しもあり、15年7-9月期の+0.3%を底に緩やかながら上昇基調が持続している。もっとも、PCE価格指数、コア価格指数ともにFRBが目標とする2%は下回っており、物価上昇圧力は依然として抑制された状況が持続している。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2016年10月31日「経済・金融フラッシュ」)

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