2016年10月28日

中国経済:1-9月期を総括した上で2017年に向けた注目ポイントを探る~住宅、民間投資、自動車が焦点に

三尾 幸吉郎

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1.GDP統計は横ばい

(図表-1)中国の実質成長率(前年同期比) 中国経済の成長率は横ばいで推移している。10月19日に中国国家統計局が公表した7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比6.7%増となり、1-3月期から3四半期連続で同6.7%増となった(図表-1)。内訳を見ると、第1次産業は前年同期比4.0%増、第2次産業は同6.1%増、第3次産業は同7.6%増だった。第3次産業が引き続き高い伸びを示し経済を牽引するとともに、ここもと経済成長の足かせとなっていた工業部門も、1-3月期の伸び(同5.7%増)をボトムに4-6月期は同6.0%増、7-9月期は同6.1%増と、低水準ながらも回復基調が続いた。
(図表-2)中国の実質成長率(前期比、季節調整後) また、同時に公表された前期比の伸びを見ると、7-9月期は前期比1.8%増と年率換算すれば7.4%前後の高い伸びを示した。4-6月期の同1.9%増(改定後)からは0.1ポイント低下したものの、1-3月期の同1.2%増(年率換算4.9%前後)をボトムに、年率換算7%台の高い伸びが続いており、2016年の成長率目標である“6.5-7%”の達成をほぼ確実とした(図表-2)。

 
(図表-3)インフレ率の推移 一方、インフレ率は春節(旧正月)の時期に食品が急騰したことや原油が底打ちしたことを受けてやや上昇した。1-9月期の消費者物価は前年同期比2.0%上昇と昨年の同1.4%上昇を上回った。また、工業生産者出荷価格も同2.9%低下と昨年の同5.2%低下から下落ピッチが鈍化した。特に9月単月では前年同月比0.1%上昇と4年半に渡った下落に歯止めが掛かった(図表-3)。これを受けて名目成長率が実質成長率を下回る“名実逆転”は解消、1-9月期の名目成長率は前年同期比7.4%増と、実質成長率(同6.7%増)を0.7ポイント上回った。過剰生産能力を背景としたデフレ懸念は依然として根強いものの、供給面では鉄鋼の大型合併など構造改革に対する期待が高まっており、需要面でもインフラ整備の加速に伴い需要が増えたことから需給バランスは改善、デフレ圧力はやや緩和してきた。
 

2.製造業は小康状態、非製造業は堅調

2.製造業は小康状態、非製造業は堅調

工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の動きを見ると、7-9月期は前年同期比6.0%増(推定1)と4-6月期の同6.2%増(推定)を下回ったものの、1-3月期の同5.8%増は若干上回り6%前後で小康状態にある(図表-4)。内訳を見ると、鉱業は前年同期比1.4%減(推定)と2四半期連続マイナスとなったものの、製造業は自動車が同22.7%増(推定)と高い伸びを示したことなどで7%前後を維持、電力エネルギー生産供給業も同7.7%増(推定)と伸びを高めた(図表-5)。
(図表-4)工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移/(図表-5)業種別の工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移
また、製造業PMIの動きを見ると(図表-6)、2月には49.0%まで低下して景気下振れ懸念が高まったものの、その後は一進一退ながらも8月には50.4%と拡張・収縮の境界となる50%を回復し9月も同水準を維持、同時に発表された予想指数も60%近い水準を回復している。一方、非製造業PMI(商務活動指数)を見ると(図表-7)、2月には一時53%を割り込んだものの、3月には53%台を回復、その後も7ヵ月連続で53%台を維持している。また、同時に発表された予想指数も9月は61.1%と大きく上昇、非製造業の堅調な動きは今後もしばらく続くと見られる。
(図表-6)製造業PMI/(図表-7)非製造業PMI
 
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
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三尾 幸吉郎

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