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- 米金融政策見通し-信任維持?のため、年内12月利上げへ。来年は2回の追加利上げを予想
2016年10月21日
(2)今後の金融政策見通し:信任維持(?)のため、12月利上げを実施
直近9月のFOMC会合では、声明文の景気見通しについて、「短期的な経済見通しに関するリスクがバランスしている」と評価が上方修正されたほか、政策ガイダンスについて、「政策金利引き上げの根拠が強まった」ことが明記された。さらに、会合後の記者会見でイエレン議長が、労働市場の回復が持続する中、新たなリスクが生じない場合には、年内の利上げが適当であると言明したことから、年内追加利上げの可能性が高まった。
また、同会合の議事録では、政策金利の引き上げを主張し政策金利据え置きに反対票を投じた3名のうち、カンザスシティー連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁ともに反対理由として、労働市場、物価ともに政策目標に近づいている中で、政策金利の引き上げを実施しないことが、これまでの市場との政策コミュニケーションとの整合性において、FRBの信任を低下させる可能性に言及していたことが注目される。両氏ともに、FRBの言行一致を気にしているようだ。今回、イエレン議長が年内利上げを明言したことで言行一致という点で外堀は埋まったとみて良いだろう。
直近9月のFOMC会合では、声明文の景気見通しについて、「短期的な経済見通しに関するリスクがバランスしている」と評価が上方修正されたほか、政策ガイダンスについて、「政策金利引き上げの根拠が強まった」ことが明記された。さらに、会合後の記者会見でイエレン議長が、労働市場の回復が持続する中、新たなリスクが生じない場合には、年内の利上げが適当であると言明したことから、年内追加利上げの可能性が高まった。
また、同会合の議事録では、政策金利の引き上げを主張し政策金利据え置きに反対票を投じた3名のうち、カンザスシティー連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁ともに反対理由として、労働市場、物価ともに政策目標に近づいている中で、政策金利の引き上げを実施しないことが、これまでの市場との政策コミュニケーションとの整合性において、FRBの信任を低下させる可能性に言及していたことが注目される。両氏ともに、FRBの言行一致を気にしているようだ。今回、イエレン議長が年内利上げを明言したことで言行一致という点で外堀は埋まったとみて良いだろう。
さて、次回の利上げだが、11月会合(1~2日)では、直後の8日に大統領選挙が控えているほか、イエレン議長の記者会見も予定されていないことから、利上げは考え難い。このため、次回利上げは12月となろう。実際、9月会合を受けて金融市場が織込む12月の利上げ確率も、直近(10月20日時点)で57%と高くなっており、12月利上げに向けた環境は整ったと言える(図表12)。
さて、来年以降の金融政策だが、当研究所では、資本市場の安定が持続する前提で6月、12月の年2回の利上げに留まると予想している。利上げ幅が小幅に留まる理由は、自然利子率の低さと、来年の金融政策投票メンバーがよりハト派的な構成になることによる。
さて、来年以降の金融政策だが、当研究所では、資本市場の安定が持続する前提で6月、12月の年2回の利上げに留まると予想している。利上げ幅が小幅に留まる理由は、自然利子率の低さと、来年の金融政策投票メンバーがよりハト派的な構成になることによる。
イエレン議長は、利上げペースを緩やかに出来る理由として、自然利子率と実際の実質短期金利の水準について言及している。自然利子率とは理論上の金利で、完全雇用の下で経済・物価に対して引締め的にも緩和的にも作用しない中立的な実質金利の水準を示す。
FRBのエコノミストであるLaubach氏とWilliams氏による自然利子率の推計結果と、実質FF金利の推移をみると、自然利子率は金融危機に伴って低下、足元で0.2%とゼロ近傍で推移する一方、実質FF金利は▲1%程度となっている(図表13)。
金融政策による景気刺激効果は、実質FF金利が自然利子率より低い程大きくなる。現状1%弱程度の乖離があり、金融政策は景気刺激的となっていることが分かる。一方、自然利子率がゼロ近傍に留まっている要因として、技術革新の停滞や人口動態などの要因が指摘5されており、世界的に自然利子率が低下する中で、今後も自然利子率が大幅な増加に転じる可能性は低いとみられる。FRBは、物価目標の達成時期も睨み、当面金融政策を景気刺激的にする必要があるため、FF金利の引き上げ余地は限定的とみられる。
FRBのエコノミストであるLaubach氏とWilliams氏による自然利子率の推計結果と、実質FF金利の推移をみると、自然利子率は金融危機に伴って低下、足元で0.2%とゼロ近傍で推移する一方、実質FF金利は▲1%程度となっている(図表13)。
金融政策による景気刺激効果は、実質FF金利が自然利子率より低い程大きくなる。現状1%弱程度の乖離があり、金融政策は景気刺激的となっていることが分かる。一方、自然利子率がゼロ近傍に留まっている要因として、技術革新の停滞や人口動態などの要因が指摘5されており、世界的に自然利子率が低下する中で、今後も自然利子率が大幅な増加に転じる可能性は低いとみられる。FRBは、物価目標の達成時期も睨み、当面金融政策を景気刺激的にする必要があるため、FF金利の引き上げ余地は限定的とみられる。
また、金融政策の決定権を持つ委員構成は、来年によりハト派的になることが見込まれる。米金融政策は、連銀理事5名6と地区連銀総裁5名の合計10名の投票で決まる(図表14)。このうち、ニューヨーク連銀のダドリー総裁はFRB副議長を兼務しており、固定メンバーとなっている一方、残り4人の地区連銀総裁は1年毎に持ち回りで交代する仕組みとなっている。
ブルームバーグは、各委員の発言や過去の金融政策に関する投票行動などから、各委員の政策スタンス評価を行っている。これをみると、連銀理事は中立からハト派が多い一方、ダドリー総裁を除く地区連銀総裁4人のうち3人はタカ派とタカ派が多かったことが分かる。実際、9月のFOMC会合で反対票を投じた3名は、全員が地区連銀総裁であった。
一方、来年の新メンバーをみると、極端なハト派やタカ派がおらず、タカ派とハト派それぞれ2名ずつと人数が拮抗しており、今年に比べるとハト派の割合が増えることが予想されている。このため、来年の追加利上げ判断はより慎重になることが見込まれる。
このように考えると、17年の政策金利引き上げペースも緩やかに留まることが予想され、政策金利引き上げに伴う米経済への影響は限定的となろう。
5 10月17日にフィッシャー副議長は、低金利の原因と示唆について講演を行った。
6 本来は7名だが、現在は2名欠員が生じている。
ブルームバーグは、各委員の発言や過去の金融政策に関する投票行動などから、各委員の政策スタンス評価を行っている。これをみると、連銀理事は中立からハト派が多い一方、ダドリー総裁を除く地区連銀総裁4人のうち3人はタカ派とタカ派が多かったことが分かる。実際、9月のFOMC会合で反対票を投じた3名は、全員が地区連銀総裁であった。
一方、来年の新メンバーをみると、極端なハト派やタカ派がおらず、タカ派とハト派それぞれ2名ずつと人数が拮抗しており、今年に比べるとハト派の割合が増えることが予想されている。このため、来年の追加利上げ判断はより慎重になることが見込まれる。
このように考えると、17年の政策金利引き上げペースも緩やかに留まることが予想され、政策金利引き上げに伴う米経済への影響は限定的となろう。
5 10月17日にフィッシャー副議長は、低金利の原因と示唆について講演を行った。
6 本来は7名だが、現在は2名欠員が生じている。
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2016年10月21日「Weekly エコノミスト・レター」)
公式SNSアカウント
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