2016年10月18日

生命保険市場の基礎データ(2015年版)【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(22)

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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4-保険金・給付金等の支払いの推移

保険金・給付金等の支払いの推移 2015年の生命保険の死亡保険金や満期保険金等の支払いは、前年より64.2%増加して4480億元となった。

また、健康保険の給付金の支払いについては、規模は小さいものの、前年比33.6%増の763億元に増加している。

公的医療保険において、自己負担割合が相対的に高い中国では、国が民間の健康保険、特に医療保険を社会保障体系の1つとして重要な位置づけをしている。官民協働の運営による大病医療保険を含め、医療保険の規模は急速に拡大しており、それにともなって給付金の支払いも増加している。

 

5-主要な保険会社〔2015年・国内系/外資系上位5社〕

5-主要な保険会社〔2015年・国内系/外資系上位5社〕

主要な保険会社〔2015年・国内系/外資系上位5社〕 2015年、国内系の生命保険会社(医療保険専門、企業年金専門の保険会社を含む)は46社、外資系の生命保険会社は28社であった。

中国の生命保険市場は、国内系生保による市場の占有率が高い。2015年の生保の収入保険料をみると、最大手の国内系生保5社のみで56.4%のシェアを占め、国内系生保全体では保険料収入の93.8%を占めている。ただし、首位の中国人寿のシェアは減少傾向にある。

一方、外資系生保は、工銀安盛、招商信諾といった、銀行の出資が50%以上の保険会社を中心に収入保険料が大幅に増加した。加えて、外資系生保全体でも収入保険料は前年比35.1%と大幅に増加した。

 

6-資産運用状況〔2015年・生損保合計〕

6-資産運用状況〔2015年・生損保合計〕

資産運用状況〔2015年・生損保合計〕 2015年の運用資産残高(生損合計)は、11兆2000億元(約205兆円、年初より19.8%増)であった。運用は、債券(34.4%)、銀行預金(21.8%)が全体のおよそ56%を占め、インカムゲインの確保を中心とした安全性の高い資産運用に軸足を置いている。ただし、預金金利の低下等から、これらの資産の構成比は前年より9ポイントほど減少している。一方で、インフラ関連の金融商品(7.8%)や理財商品(4.9%)など利回りの高い商品への投資が増加している。

2015年の運用収益は7804億元で、利回りは7.56%、2008 年以降、初めて7%台に達した。


 

7-保険の普及状況〔2015年・生損保合計〕

7-保険の普及状況〔2015年・生損保合計〕

2015年の各地域における保険の普及状況について、「1人あたりの保険料拠出額(生損保合計)」をみると、全国平均値は1767元(約32000円)で、2014年より288元増加した。地域別でみると、経済が発展し、所得の高い東部地域の普及が最も進んでおり、中でも北京市、上海市が突出している。東北地域、中部地域、西部地域に属する多くの地域では全国平均値の1767元以下であるのに対して、1人あたりの保険料拠出が最も多い北京市(6502元、約12万円)は全国平均値の3.7倍の規模となっている。また、1人あたりの保険料拠出が最も少ない西蔵(チベット)自治区(536元、約1万円)は全国平均値の約1/3となり、北京市の1/12にとどまるなど、地域によって、普及の格差は大きい。
保険の普及状況〔2015年・生損保合計〕
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴
  • 【職歴】
     2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
     (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
     ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
     (2019年度・2020年度・2023年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
     ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
     日本保険学会、社会政策学会、他
     博士(学術)

(2016年10月18日「保険・年金フォーカス」)

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