2016年10月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~7月の下振れは一時的。底打ちの動きは継続。

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの16年8月の輸出額は前年同月比11.8%増(前月:同4.3%増)と軽工業製品を中心に上昇して5ヵ月ぶりの二桁増を記録した(図表9)。

品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同3.7%減(前月:同5.7%増)と7ヵ月ぶりのマイナスとなったものの、織物・衣類が同9.1%増(前月:同2.0%減)、履物が同12.6%増(前月:同3.4%増)とそれぞれ大きく上昇した。またコンピュータ・電子部品は同22.6%増(前月:同25.3%増)と小幅に低下したものの、高水準を維持した。

資本別に見ると、輸出全体の7割を占める外資系企業が同8.4%増(前月:同5.0%増)と上昇したほか、地場企業も同3.4%増(前月:同0.7%減)と3ヵ月ぶりのプラスとなった。

8月の輸入額は前年同月比9.9%増と、前月の同3.0%減から上昇した。結果、8月の貿易収支は5.7億ドルの黒字と、前月から0.1億ドル黒字が拡大した(図表10)。
(図表9)ベトナム輸出の伸び率(品目別)/(図表10)ベトナム 貿易収支の推移
シンガポールの16年8月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比3.7%増(前月:同9.9%減)と増加に転じた(図表11)。輸出の伸び率は上下に振れる展開であるが、総じて年明け以降の底入れの動きは続いていると言える。

品目別に見ると、輸出(石油と再輸出除く)全体の約3割を占める電子製品は同2.5%減(前月:同12.3%減)とマイナス幅が縮小した。通信機器(同13.4%減)やPC(同18.6%減)、PC部品(同4.5%減)の減少は続いているものの、IC(同1.7%増)とダイオード・トランジスタ(同1.3%増)が上昇した。また同じく全体の約3割を占める化学製品は同8.2%減(前月:同8.6%減)と小幅に上昇したものの、医薬品と石油化学製品が二桁減となった。その他製品が同19.0%増(前月:同8.9%減)と大きく上昇して再びプラスとなった。

8月の輸出額は前年同月比6.1%増(前月:同9.9%減)、輸入額は前年同月比2.5%増(前月:同11.6%減)と、それぞれ上昇した。結果、8月の貿易収支は39.2億ドルの黒字と、前月から1.3億ドル黒字が縮小した(図表12)。
(図表11)シンガポール輸出の伸び率(品目別)/(図表12)シンガポール貿易収支
フィリピンの16年8月の輸出額は前年同月比4.4%減と、前月の同13.0%減から上昇した(図表13)。輸出の牽引役である電子製品が4ヵ月ぶりに増加に転じたものの、幅広い品目が減少傾向にあり、引き続き輸出の停滞懸念は燻っている。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同11.6%増(前月:同14.9%減)と、4ヵ月ぶりのプラスに転じた。電子製品の中では、電子データ処理機が同29.9%増と5ヵ月連続の二桁増となったほか、半導体デバイスも同11.2%増と6ヵ月ぶりのプラスに転じた。その他9品目を見ると、イグニッション・ワイヤーセット(同12.9%増)とその他鉱産物(同2.3%増)こそ増加したものの、機械・輸送用機器(同52.5%減)、金属部品(同25.9%減)、化学(同16.2%減)、アパレル(同11.3%減)、その他製造品(同9.3%減)、木工品・家具(同8.8%減)、ココナッツオイル(同6.9%減)など幅広い品目が減少した。

8月の輸入額は前年同月比12.2%増と、前月の同1.7%減から上昇した。結果、8月の貿易収支は20.2億ドルの赤字と、前月から0.2億ドル赤字が縮小した(図表14)。
(図表13)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)/(図表14)フィリピンの貿易収支
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2016年10月11日「経済・金融フラッシュ」)

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