2016年10月04日

地方公共団体の財政健全化について~「平成27年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(速報)」について~

神戸 雄堂

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3――健全化判断比率の平均値は低下傾向

健全化判断比率において、早期健全化基準以上の団体数はここ数年変わっていない。また早期健全化基準がいわゆるイエローカードであることを踏まえると、特に財政状況が悪い団体が増えてはいないものの、地方公共団体全体として財政状況が改善しているかどうかは定かではない。したがって、もはや早期健全化基準以上の団体数だけに着目しても、何も読み取れない。

そこで、地方公共団体全体の財政状況を検証するため、団体種類ごとに健全化判断比率の平均値3の推移を見ると、実質公債費比率については、都道府県は一旦上昇したものの、H23年度以降は緩やかに低下。政令都市は緩やかに、市区町村は顕著に低下している。
実質公債費比率の平均値の推移
将来負担比率については、全体的に顕著に低下しており、また全市区町村に対する将来負担がない4市区町村の割合5も増加している。
将来負担比率の平均値及び将来負担なし市区町村割合の推移
以上のことから、健全化判断比率を見る限り、地方公共団体全体として財政状況は改善していると言える。
 
 
3 実質赤字比率及び連結実質赤字比率は赤字がある場合のみ定義され、全体の平均値は公表されていないため、実質公債費比率及び将来負担比率のみを対象とする。資金不足比率の平均値についても公表されていない
4 将来負担比率の算定過程で分子が負もしくはゼロとなったケースを「将来負担がない」と表記した
5 将来負担比率の平均値は将来負担がある市区町村のみを対象に加重平均しているため、将来負担がない市区町村の割合についても分析している
 

4――おわりに

4――おわりに

健全化判断比率において、早期健全化基準以上となるような特に財政状況が悪い団体の数が増えていないだけでなく、その平均値も低下しているため、地方公共団体全体として財政状況が改善していると言える。

ただし、この改善が、本来地方公共団体が住民に提供すべき公共サービスの質の低下と引き換えにしているものであれば、真の財政健全化とは言えないだろう。特に将来負担比率の改善については、社会資本における老朽化対策の先送りという将来負担が潜在しているという懸念がある。しかし、早ければ今年から資産の老朽化度合いを把握する「資産老朽化比率」が公表される見込みであり、今後、健全化判断比率・資金不足比率に加えて、資産老朽化比率もあわせて分析することで、真の財政健全化の状況についても明らかになるだろう。
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(2016年10月04日「基礎研レター」)

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